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第29回
臓器の老化⑨
生命と免疫を支える「腸」
腎臓と腸はミトコンドリア量が多く、膨大な血液を日々処理し、血液中の酸素や栄養素を使って常にミトコンドリアをフル回転させているため負荷が大きい臓器です。これらが衰えると全身の機能低下につながります。いわば両者は“全身のペースメーカー”の役割を担い、老化の進行にも深く関わる重要な存在です。
特に腸は生命の根幹ともいえる臓器です。生物はまず腸から誕生し、その後に脳が発達してきたとされ、脳の本来の役割は腸をうまく動かすためにできたのです。私たちは日々食べ続けることで生命を維持し、遺伝子を次世代へとつないでいますが、その中心にあるのが消化器系、すなわち腸です。さらに食物とともに侵入する細菌や異物から体を守るため、腸には高度な「免疫システム」が備わっており、その働きを支えるのが腸内細菌です。
発酵食品と食物繊維で始める腸活習慣

腸内環境を整えるうえで重要なのが「発酵食品」と「食物繊維」です。発酵食品は善玉菌を補い、腸内環境のバランスを整えます。一方で食物繊維は、人の体では消化されないものの、腸内細菌にとっては欠かせない“エサ”となり、その働きを活性化させます。豆類や未精製の穀物、ゴボウや大根などの根菜類、海藻、果物、ナッツ類などに豊富に含まれ、腸内細菌の多様性を高めるうえで重要な役割を果たします。しかし日本人は、この食物繊維の摂取量が基準値(1日男性24~27グラム、女性19~21グラム)に届いていないのが現状です。日々の食事の中で意識的に取り入れ、腸内細菌を“育てる”視点を持つことが大切です。
原稿執筆
慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
伊藤 裕(いとう ひろし)先生
京都大学医学部卒業後、ハーバード大学、スタンフォード大学医学部博士研究員を経て、慶応義塾大学医学部教授を務める。2003年に世界で初めて「メタボリックドミノ」を提唱。世界に先駆けて胃から分泌される「グレリン」がミトコンドリアを元気にすると発見。メディアに多数登場。
バックナンバー
- 第29回 臓器の老化⑨
- 第28回 臓器の老化⑧
- 第27回 臓器の老化⑦
- 第26回 臓器の老化⑥
- 第25回 臓器の老化⑤
- 第24回 臓器の老化④
- 第23回 臓器の老化③
- 第22回 臓器の老化②
- 第21回 臓器の老化①
- 第20回 高齢者と食事の栄養④
- 第19回 高齢者と食事の栄養③
- 第18回 高齢者と食事の栄養②
- 第17回 高齢者と食事の栄養①
- 第16回 認知症とミトコンドリア③
- 第15回 認知症とミトコンドリア②
- 第14回 認知症とミトコンドリア①
- 第13回 ミトコンドリア健康長寿法④
- 第12回 ミトコンドリア健康長寿法③
- 第11回 ミトコンドリア健康長寿法②
- 第10回 ミトコンドリア健康長寿法①
- 第9回 鶴は千年、亀は万年
- 第8回 ミトコンドリア -生きる源
- 第7回 腸内細菌との共生 -ギフトエコノミー
- 第6回 なぜ、腸内細菌は心身に影響を及ぼすのか?
- 第5回 腸内細菌が喜ぶ贈り物とは?
- 第4回 「善玉菌 vs. 悪玉菌」のうそ
- 第3回 1,000種類、100兆個以上の腸内細菌
- 第2回 生物はすべて「食べるために生きている?」
- 第1回 健康な体は健康な胃腸に宿る






