健康コラム
健康に関する情報や知っておくと役に立つ情報等を医師の視点からお伝えします。
第28回

臓器の老化⑧

腎臓は本当に「元に戻らない臓器」なのか

腎臓は「一度悪くなると元に戻らない」「若返りにくい臓器」と言われがちですが、私は必ずしもそうだとは思っていません。確かに、腎機能がかなり低下した段階では回復が難しいのは事実です。ただ、それは“重症になってから”の話であって、私たちの目がそこにしか向いてないことが問題であり、もっと早い段階から介入すれば改善の可能性はあります。人工透析に至る原因も時代とともに変化してきました。かつては腎炎が多く、その後は糖尿病が主因でしたが、近年はそれも頭打ちになっています。最近では腎硬化症(じんこうかしょう)とか、意外にも「原因不明」とされるケースが増えています。しかし、これは特殊な病気が増えたというより、高齢化社会の中で日々の生活負荷が積み重なり、腎臓が静かに弱っていく人が増えているということです。

血圧・血糖・尿酸値―腎臓を左右する生活習慣

その中で特に影響が大きいのが血圧です。それから、もちろん血糖値に加え、意外と見落とされがちなのが尿酸値で、尿酸が高めの状態が続くと、微細な結晶が腎臓に蓄積し負担になる可能性があります。これらはいずれも、塩分の摂り過ぎや食生活と深く関係しています。腸に過度な負担をかけないことが大切なように、腎臓にも「酷使しない」配慮が必要なのです。適度なカロリー制限をしている人のほうが長生きするというデータもあるので、明確な線引きは難しいですが、少なくとも65歳くらいまでは“食べ過ぎない”“摂り過ぎない”という意識を持つことが、腎臓を守るうえでも大切ではないでしょうか。
慶應義塾大学 予防医療センター 伊藤裕先生
原稿執筆

慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
伊藤 裕(いとう ひろし)先生

京都大学医学部卒業後、ハーバード大学、スタンフォード大学医学部博士研究員を経て、慶応義塾大学医学部教授を務める。2003年に世界で初めて「メタボリックドミノ」を提唱。世界に先駆けて胃から分泌される「グレリン」がミトコンドリアを元気にすると発見。メディアに多数登場。