健康コラム
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特別寄稿

自分でできる新型コロナウイルス感染予防法

特別に広島大学名誉教授 土肥雪彦先生から「新型コロナウイルス感染予防法」に関する寄稿文をいただきました。

新型コロナウイルス感染症から身を守るための免疫防御力強化法。

日本のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)第一波は、いったん沈静化がみられましたが、無症状感染者の急増もあり、いずれ来る第二波への対策が重要です。マスク、手洗いやうがい、三密(密閉・密集・密接)を避けた在宅などの用心と我慢が肝要。時間は掛かりそうですが簡便な診断法と治療薬、ワクチンが製品化されれば終息しそう、などと言われます。
しかし、もう1つ大切なことは、本来人間が備えている免疫防御力や自己治癒力を強化し活用して、感染防止、あるいは感染したとしても軽症で切り抜けることです。でも、そのためにどうすれば良いかは厚生労働省も提言していません。よく言われるのは「日光浴しながら適度な運動、栄養バランスの良い食事と良質な睡眠をとる、ストレスを逃がす」などの重要性です。では具体的にどうするか。その答えの多くは、私が以前EOS会報誌に書かせていただいた自律神経強化・調整法、調食(食事・栄養法)、調息(呼吸法)、調心・調身(心身調整法)をもとにした自己治癒力増強のための「セルフケア・ヒーリング(自分自身で体をケアする、癒す)法」に見つかると思います*。今回はその中から、新型コロナ肺炎予防対策に活用できそうなポイントを数点まとめてみました。

* 土肥先生の連載記事(全7回)。こちらからご覧いただけます。

“自律神経系”の強化で自己治癒力を高める。

最初に「人は日々、機械のように体のスイッチを入れたり切ったりしなくても、ちゃんと生きていけるのはなぜか」、これを考えるだけでも自己治癒力を意識するきっかけとなり、健康の維持、病気の予防と治癒につながります。人の身体は約40兆個の細胞で作られています。日々損傷、劣化するそれらの細胞を1日数千億個も取り替える、あるいは膨大な生体情報をうまく制御・分担させ、組織、臓器を動かして、生きるための生体機能を一定の状態に保つことを生体恒常性(ホメオスタシス)と云います。その中で最も重要な役割を果たすのが、免疫防御系、自律神経系、内分泌ホルモン系の三大生命維持システムです。
免疫防御系は、大きく「自然免疫」と「獲得免疫」に分けられます。自然免疫とは、樹状細胞やマクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞などを駆使し、細菌やウイルスなど外部からの侵入者を非特異的(相手を特定せず無差別に攻撃を仕掛ける)に排除します。それは生来備わっている防御機構で、新型コロナ感染の第1防御線にもなっています。一方の獲得免疫は、一度感染した病原体情報を特異的に記憶することで、再侵入時には見分けて、それを主にT細胞(細胞障害性T細胞・ヘルパーT細胞)、そしてB細胞が作った免疫グロブリン(抗体)などが活躍し、特異的に効果よく病原体を排除する仕組みです。ウイルスの遺伝子情報を持ったワクチンを注射しても獲得免疫と同じことが起こり、ウイルスが侵入しても増殖させないで排除してくれるので発病しないで済みます。
内分泌ホルモン系は、視床・脳下垂体、甲状腺・副甲状腺、副腎、膵臓、卵巣、精巣などが協力し、代謝・成長などに必要なホルモンを提供し、命を支えています。赤ん坊から魅力的な男女に成長し、結ばれて妊娠、出産する、このような人の一生折々に様々なホルモンが関わり、人類の命の連鎖にも貢献しています。
そして自律神経系には、闘争と逃走など、ハイリスク管理を担当する「交感神経」、休養と消化に関連する「副交感神経」があり、呼吸や血液循環、体温、消化吸収、排泄に関わる主要臓器など、心身の重要機能を自動的に制御してくれます。ストレスが続くと、交感神経に過度の緊張状態を招き、コーチゾールホルモンも増加して免疫防御系機能の低下や血圧上昇などを引き起こし、感染、ガン、うつ、糖尿、心・脳血管障害などにつながります。一方、副交感神経が優位になると寛ぎ、多くの臓器は活性化し、消化吸収、ホルモン代謝、免疫能なども向上します。交感神経と副交感神経をバランスよく調整できれば免疫防御系や内分泌ホルモン系も十分機能して自己治癒力が高まり、ウイルス感染予防や早期回復をもたらします。

自律神経バランス調整法
ハミング呼吸(鼻から息を吐きながら鼻歌の要領で「ふぅ~~ん」と長いハミング)やゆっくり深い腹式深呼吸をする、それだけでゆったり寛げ至福の境地になれれば占めたものです。そして爪揉みや耳ひっぱり神門メソッド(EOS会報誌2018年秋号で解説)などを活用すれば、こんな簡便な手技だけでも容易に軽い副交感神経優位状態で調整でき,免疫防御系も強化され新型コロナウイルスを防ぎ、ストレスも緩和してくれるようです。
—爪揉み療法(福田稔・安保徹氏法)—
出典:『免疫を高めて病気を治す「爪もみ」療法DVDブック』より
—耳ひっぱり神門メソッド(飯島敬一氏法)—
  • 神門ゾーン:耳の上部。耳ひっぱりで中心となる「神門」があるゾーン。自律神経を整えて脳にスイッチを入れる。
  • 肩首ゾーン:耳の真ん中。首や肩に対応。首から肩の血流をよくする。
  • 頭ゾーン:耳たぶ。頭に対応。脳の血流をよくする。

※各ゾーンを少し強めに3回外側に向け引っ張る。

免疫力強化に欠かせない食材「まごわやさしい」。

暴飲、暴食、添加物の多いジャンクフード、白砂糖、白米、白パン、トランス脂肪酸を含むマーガリン、ショートニングなどは避け、炭水化物、たんぱく質、脂肪、食物繊維、ビタミン、アミノ酸、ミネラルをバランス良く適正に摂ることで免疫能や自己治癒力は自ら強化されます。
そして、生活習慣病、ガンや認知症、老化の予防に良い食品リストは色々ありますが、日本の伝統的な食材「まごわやさしい」を活用して良質なたんぱく質、抗炎症、抗酸化性の高いオメガ3/7/9脂肪酸、ビタミン、ミネラルなどを補っていけばもっと大きな効果が期待できます。ビタミンD/A/E/C/B6、葉酸、B12、およびマグネシウム、亜鉛、銅、セレンなどのようなミネラル、善玉腸内細菌を増やすための納豆やキムチなど発酵食品、バイオプラス、食物繊維などを意識して補うことにより腸内フローラも調い、免疫システムは強化され、ウイルス感染を防ぐ可能性が高くなります。
無農薬のコーヒーや粉茶、JWティーをゆっくり楽しむだけでも元気になりますし、体力の落ちている方には漢方やアーユルベーダなど伝承医学も活用して調えます。気力体力、自己治癒力も増強し新型コロナ・インフルエンザウイルス感染予防は大いに期待できますね。

  • 大豆、あずき、納豆などの豆類。
    タンパク質、マグネシウムの摂取に。
  • ゴマ、クルミなどナッツ類。
    オメガ3脂肪酸、ビタミンEが豊富。慢性炎症抑制。
  • わかめ、昆布、のりなど海藻類。
    ヨード、カルシウムが豊富。甲状腺機能を高める。
  • 野菜、根菜など。
    ベータカロテン、ビタミンCなど抗酸化物質豊富。
  • 青魚など魚介類。
    タンパク質、オメガ3脂肪酸、亜鉛が豊富。慢性炎症抑制。
  • しいたけ、まいたけなど茸類。
    多糖類、食物繊維が豊富。免疫力を高めガン防止。
  • キクイモ、山芋、小芋などイモ類。
    食物繊維、炭水化物が豊富。腸内善玉細菌の増加。

自宅で出来る呼吸・運動法。

呼吸のワーク前に、まず目・鼻に目薬などをたらしきれいにする。口腔咽頭はうがい液などを薄めて満たし5秒ぐらい我慢した後に、しっかりガラガラッとうがいして吐き出す。それを数回繰り返すと、くっ付いていたウイルスをしっかり洗い流せます。呼吸法で意識して欲しいことは、普段している呼吸では肺の上3分の2しか使ってないので、下肺では空気が淀み入ったウイルスが溜まり増殖していきます。ぞっとする光景をよくイメージしておいてください。
以前、4種類の呼吸法を紹介しましたが(本誌2019年新春号で解説)、ここでは先ず「腹式深呼吸法」です。空気のきれいなところでしっかりお腹を引っ込め押しながら息を吐き続ける、次はゆっくり息を吸い続けながらお腹、胸を膨らませていく、それを繰り返してください。肺内のウイルスをスッカリきれいに吐き出したというイメージで終わります。あとは大好きな歌をハミングして先述のハミング呼吸もやってみてください。
「心身一如*」と云うように運動・調身で身も心も甦りますが、その後は手当てと休養、そして夜の睡眠6時間以上をセットで行ってみてください。さらなる効果で癒され、ストレスも軽くなり免疫力も上がります。以前ボデイワークも多種紹介しましたが、ここでは簡単なモノを1つ。肩幅ぐらいで立ち、セルフハグして指先は肋間(肋骨と肋骨の間)に当て、100回ぐらい軽く肩と膝を上下に動かします。これだけで脊椎神経31対が刺激され、全身の細胞、組織、臓器が活性化します。また、在宅で座りっぱなしでは、エコノミークラス症候群が心配。仰向けになり片膝をあげ、その膝裏に両手を当てて下腿を上下大きく15回前後ブラブラさせると血流が改善します。小まめな水分補給も忘れずに。

下腿を15回前後ブラブラする。

* 肉体と精神は一体のもので分けることができず、1つのものの両面であるという仏教の教え。

新型コロナウイルス感染症パンデミックを生き抜くには、叡智と戦略も必要です。いま世界中で最先端医学を駆使し診断と治療薬、ワクチン作成など進行中、いま暫しの我慢でしょう。先ずは自分が無理なく出来ることからやることが大切。腕の良い呼吸器内科医を掛かり付け医に持ち先端医療を善用する、そして今回述べた簡単なセルフケア・ヒーリング法を応用して心身を癒し、自己治癒力・免疫力を強化しておくことが大切、感染予防に役立ちます。日々、戴いた命を天地人、大宇宙に深謝する、そしてJWティー、バイオプラスも活用しながら頑張りましょう。

広島大学名誉教授 土肥雪彦先生 原稿執筆

広島大学名誉教授/県立広島病院名誉院長/あかね会老健シェスタ施設長
土肥 雪彦(どひ きよひこ)先生

1960年広島大学医学部卒業。広島大学医学部教授(第2外科学)、広島大学医学部付属病院長、日本肝移植研究会会長、県立広島病院長、中国労災病院長、医療法人あかね会土谷総合病院顧問などを歴任。現在あかね会老健シェスタ施設長。