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第22回
臓器の老化②
世界の死亡の50%以上が肥満によって引き起こされる?
肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、さらに脳卒中、心筋梗塞、腎臓病、がん…。生まれてから死ぬまでの人生の行程のなかで、我々はこうしたいくつもの病気に遭遇し、そこから回復して、年を重ねていく。そして、いつかは、そのうちのどれかの病気にとらわれて命を落とすことになる。どうしたらこうした病気になるべく出あうことなく、認知症になることも、寝たきりになることもなく、臓器たちを健やかに保ち長く生きられるのだろうか? 臓器たちを最初に躓かせるのは肥満だ。現在、実に世界の死亡の50%以上は肥満によって引き起こされる病気であると言われている。高齢者の方々は節制のし過ぎによる栄養失調のほうが心配だが、40代、50代などの世代は太ることが命取りになることのほうが多い。
臓器たちのドミノが総崩れに

肥満に端を発し、メタボリックシンドローム、そして血管病やがんが起こってくる。これらの体の状態の変化、様々な病気はあたかも“ドミノ倒し”のように次々と連続して起こってくる。臓器たちは、体の中でお互いに声を掛け合い、日々芸術的とも言える連係プレーを演じている。だから、ある臓器が倒れると別の臓器も次々と倒れていく。これを私は「メタボリックドミノ」と呼んでいる。臓器たちのドミノが総崩れにならないようにするために大切なことは何か、次回以降お話ししていきます。

原稿執筆
慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
伊藤 裕(いとう ひろし)先生
京都大学医学部卒業後、ハーバード大学、スタンフォード大学医学部博士研究員を経て、慶応義塾大学医学部教授を務める。2003年に世界で初めて「メタボリックドミノ」を提唱。世界に先駆けて胃から分泌される「グレリン」がミトコンドリアを元気にすると発見。メディアに多数登場。
バックナンバー
- 第22回 臓器の老化②
- 第21回 臓器の老化①
- 第20回 高齢者と食事の栄養④
- 第19回 高齢者と食事の栄養③
- 第18回 高齢者と食事の栄養②
- 第17回 高齢者と食事の栄養①
- 第16回 認知症とミトコンドリア③
- 第15回 認知症とミトコンドリア②
- 第14回 認知症とミトコンドリア①
- 第13回 ミトコンドリア健康長寿法④
- 第12回 ミトコンドリア健康長寿法③
- 第11回 ミトコンドリア健康長寿法②
- 第10回 ミトコンドリア健康長寿法①
- 第9回 鶴は千年、亀は万年
- 第8回 ミトコンドリア -生きる源
- 第7回 腸内細菌との共生 -ギフトエコノミー
- 第6回 なぜ、腸内細菌は心身に影響を及ぼすのか?
- 第5回 腸内細菌が喜ぶ贈り物とは?
- 第4回 「善玉菌 vs. 悪玉菌」のうそ
- 第3回 1,000種類、100兆個以上の腸内細菌
- 第2回 生物はすべて「食べるために生きている?」
- 第1回 健康な体は健康な胃腸に宿る