ミトコンドリア健康長寿法④
「運動」がミトコンドリアを奮い立たせる
メタボリックシンドロームの患者さんを診察する際、私が「少し痩せたほうがいいですね」と言うと、「すみません。最近運動不足でして。少し動くようにします!」とオウム返しのように言われます。私は悲しくなります。食べる物を減らすことはまったく考えていらっしゃらない。もちろん運動することで少しは消費カロリーが増えますが、肥満になっている方では、圧倒的に摂取カロリーが多い状態なのです。
それでは、「運動」はあまり意味がないのでしょうか? そんなことはありません。何故なら「運動」は最も効率的にミトコンドリアを元気にするからです。ミトコンドリアは、酸素を使って糖や脂肪からエネルギーの源、ATPをつくっています。運動すると、筋肉ではたくさんのエネルギーが必要になります。それに伴い血液がたくさん必要となり、呼吸が速くなり、心拍数も上昇します。肺にも心臓にもエネルギーが必要になります。つまり、「運動」は様々な臓器にとって“酸素不足”の状態をつくっているのです。この臓器にとってちょっと“苦しい状態”が、ミトコンドリアを奮い立たせることになるのです。
糖や脂肪のだぶつきはミトコンドリアを甘やかす


慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
伊藤 裕(いとう ひろし)先生
京都大学医学部卒業後、ハーバード大学、スタンフォード大学医学部博士研究員を経て、慶応義塾大学医学部教授を務める。2003年に世界で初めて「メタボリックドミノ」を提唱。世界に先駆けて胃から分泌される「グレリン」がミトコンドリアを元気にすると発見。メディアに多数登場。