腸内細菌の「代謝物」の変化が脳の働きに影響する
腸内細菌がなぜ、腸だけではなく、私たちの体のいろいろな臓器に影響を持つのでしょうか?腸内細菌は基本、私たちの腸のバリアを超えて「内」に入り込むことはありませんが、腸内細菌が代謝した様々な「代謝物」が腸のバリアを超えて体の「内」に取り込まれます。この代謝物は、腸の細胞にも働きますが、血液に入り全身をめぐり、また腸の周りに密に分布する神経に直接作用して、その神経の刺激が脳に伝えられます。腸内細菌由来の代謝物は、ホルモンのように働くのです。また腸のバリア機能の一翼を担う、免疫細胞(リンパ球など)に働きかけ、その結果活性化した免疫細胞は体のいろいろな臓器に散らばっていき作用を及ぼします。だから、腸内細菌の変化は、その代謝物の変化として、私たちの体と心(脳の働き)に深く影響するのです。
短鎖脂肪酸を増やす「水溶性食物繊維」
特に短鎖脂肪酸と呼ばれる物質は、いわゆる善玉菌がつくる代謝物として注目されています。炭素の数が少ない(6個以下)脂肪酸で、酢酸、プロビオン酸、酪酸などがあります。短鎖脂肪酸は、体の内に取り込まれると脂肪細胞や神経に働きかけて、エネルギー代謝を高め、メタボになりにくい体質をつくったり、腸内環境を整えて免疫力アップをもたらすなど、優れた健康効果があることが最新研究で明らかになっています。実際、心の健康には、体の健康が欠かせません。短鎖脂肪酸を増やすためには「水溶性食物繊維」などの腸内細菌のエサとなる食品を摂ることが重要です。前号でもお伝えしましたが、栄養過多と言われながら現代の日本人は食物繊維の摂取が足りていません。積極的に摂ることを心掛けましょう。