健康コラム
健康に関する情報や知っておくと役に立つ情報等を医師の視点からお伝えします。
第18回

高齢者と食事の栄養②

ご飯とみそ汁、お漬物だけでは栄養不足

前号では、50代と70代では健康における食事へのスタンスが異なるとお伝えしました。50代ではメタボリックシンドロームを気にしますが、むしろ70代では体重が減ってくるほうが危険で、毎日しっかりと食べて、食事から様々な栄養素を摂る必要があります。特に三大栄養素(炭水化物・脂質・たんぱく質)の中では、たんぱく質が足りなくなりがちです。食べる力が落ちてくるし、食欲もなくなってくる。そうすると、あっさりしたもので済まそうとするので、ご飯とみそ汁、お漬物とかだけになってしまう。それでは栄養が全然足りません。

肉や魚、卵等、たんぱく質豊富な食事を

ですから70代になったら、いわゆるおかず系のもの、肉や魚、卵という、たんぱく質が豊富な食事を意識して摂らなければなりません。どうしても消化する力が落ちてくるので、胃がもたれるとか、重めの食事を避けがちになりますよね。それはある程度仕方のないことですが、あっさりとした魚のお造りを食べるとか、最低でも豆腐や納豆等の植物性たんぱく質を摂るようにしましょう。本当は植物性のたんぱく質だけでは栄養が足りないのですけれど、無いよりはましです。次号は、高齢者のミトコンドリアを元気にする食事の仕方についてお話ししたいと思います。
慶應義塾大学 予防医療センター 伊藤裕先生
原稿執筆

慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
伊藤 裕(いとう ひろし)先生

京都大学医学部卒業後、ハーバード大学、スタンフォード大学医学部博士研究員を経て、慶応義塾大学医学部教授を務める。2003年に世界で初めて「メタボリックドミノ」を提唱。世界に先駆けて胃から分泌される「グレリン」がミトコンドリアを元気にすると発見。メディアに多数登場。