第5回

腸内細菌が喜ぶ贈り物とは?

「発酵食品」と「食物繊維」の摂取が効果的

第4回で、「健康にはたくさんの種類の腸内細菌がいることが重要」とお話をさせていただきました。では、いかにして腸内細菌が喜ぶような贈り物をしてあげられるのでしょうか? 基本的に腸内細菌の種類を増やすには「発酵食品」と「食物繊維」の摂取が効果的です。

発酵食品にはヨーグルトや乳酸飲料などの発酵乳製品、キムチや浅漬け・味噌などの発酵植物製品などがあります。「特にどれが良いでしょうか?」と聞かれることが多いのですが、善玉菌の代表とされる乳酸菌やビフィズス菌入りの食品は活用したいところです。ただ、腸内細菌はそれこそ指紋のように千差万別です。それは、出産・授乳の時に母親の産道や皮膚から腸内細菌をもらうからで、母親の腸内細菌にとても似ています。摂取を1週間くらい続けてみて、おなかの調子が変わったと感じるならば、少なくともその人の腸内細菌を変えていると言えるでしょう。既存の腸内細菌が、外来性の腸内細菌が入ってきたことで頑張ろうと活性化した証拠です。

日本人は食物繊維が足りていない

根菜類が腸内細菌のエサとして効果的。土の中で根っこの部分に土壌細菌が集まるように腸内細菌も集まる。

食物繊維は、タンパク質、脂肪、炭水化物、ミネラル、ビタミンに次ぐ第6の栄養素と言われています。しかし、私たちは食物繊維を消化することができません。つまり、直接の栄養素にはならないのです。それにも関わらず、健康にとって大切だと言われるのは、食物繊維が腸内細菌たちのエサになるからです。食物繊維は豆類、穀類(未精製)、野菜(ゴボウ、タマネギ、大根などの根菜類)、ナッツ、果物、海藻などに豊富に含まれています。健康維持に大切であるにもかかわらず、私たちは基準値(男性24~27グラム、女性19~21グラム)を摂取できていません。私たちがおなかの中に“飼っている”腸内細菌に毎日エサを与えるつもりで、積極的に食物繊維を摂りたいものです。

慶應義塾大学 予防医療センター 伊藤裕先生
原稿執筆

慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
伊藤 裕(いとう ひろし)先生

京都大学医学部卒業後、ハーバード大学、スタンフォード大学医学部博士研究員を経て、慶応義塾大学医学部教授を務める。2003年に世界で初めて「メタボリックドミノ」を提唱。世界に先駆けて胃から分泌される「グレリン」がミトコンドリアを元気にすると発見。メディアに多数登場。