ミトコンドリアが細胞の中にいてくれるおかげで、私たちはいつでもどこでも、必要な時に大量のエネルギーを使うことができるようになって爆発的に進化しました。しかしその一方で、エネルギーの燃料となる酸素と、原料となる栄養素(糖分や脂肪分等)を供給する血液が常に流れていないと私たちの細胞は数分しか持ちません。これは「代謝」が常に“流れていない”と私たちは生きられないということを端的に物語っています。誰もが老化して最後は死を迎えますが、それを一言でいうと、細胞代謝の低下であり、“ミトコンドリアの衰え”と言えます。ですから、ミトコンドリアを元気よく保つことは、私たちの体を元気に保つことに即つながります。
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第8回
ミトコンドリア -生きる源
もともとミトコンドリアは私たちと別の生物だった?
私たちの体は約60兆個の細胞からできていて、その細胞一つひとつに多いところでは2,000〜5,000個のミトコンドリアが存在しています。本来、ミトコンドリアは私たちの細胞の祖先とは異なる生物でしたが、酸素を上手く使う術に長けた生物だったので取り込みました。なぜ取り込んだのかと言うと、ミトコンドリアは酸素を活用することで、糖分や脂肪分から私たちが活動するためのエネルギー源である「ATP(アデノシン三リン酸)」を非常に効率良く産生してくれるからです。そのため、ミトコンドリアは「生きる源」とも呼ばれるのです。
ミトコンドリアを元気に保つことが体を元気に保つこと
原稿執筆
慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
伊藤 裕(いとう ひろし)先生
京都大学医学部卒業後、ハーバード大学、スタンフォード大学医学部博士研究員を経て、慶応義塾大学医学部教授を務める。2003年に世界で初めて「メタボリックドミノ」を提唱。世界に先駆けて胃から分泌される「グレリン」がミトコンドリアを元気にすると発見。メディアに多数登場。
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