健康コラム
健康に関する情報や知っておくと役に立つ情報等を医師の視点からお伝えします。
第19回

高齢者と食事の栄養③

規則的に食べる習慣が筋肉を鍛える

前号では、高齢者の食事に不足しがちな、たんぱく質の重要性についてお伝えしました。今号お伝えしたいのは、高齢者が食事をとる上で大切なことは、ある程度規則的であること。朝でも、昼でも、夜でもいいのですが、70歳を過ぎても大きな病気をせずにこられたということは、これまでの食生活が成功だった証。ですので、できるだけ毎日の食生活のパターンを変えないほうが良いでしょう。食べるという行為自体が喉、胃、腸などの消化器官の筋肉のミトコンドリアを働かせる運動になっているのです。

ちょっとの無理が筋肉を鍛え、ミトコンドリアを元気に

規則的な食生活を意識することで、「今日はちょっと食べるのが億劫だからやめておこう」、「今日は1食抜いちゃえ」ということが少なくなります。食事を抜いたりすると、体内の栄養が足りなくなる問題とともに、消化器官の筋肉の運動もそれだけしなくなるということ。多少無理してでも、例えば朝7時、昼12時、夜6時になったら、「あ、ご飯の時間だ」と食べていくことが消化器官を定期的に動かしてくれます。高齢者になると、体が楽なほう、楽なほうに流れてしまいがちですが、ちょっと無理をすることが筋肉を鍛え、ミトコンドリアを元気にしてくれるのです。
慶應義塾大学 予防医療センター 伊藤裕先生
原稿執筆

慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
伊藤 裕(いとう ひろし)先生

京都大学医学部卒業後、ハーバード大学、スタンフォード大学医学部博士研究員を経て、慶応義塾大学医学部教授を務める。2003年に世界で初めて「メタボリックドミノ」を提唱。世界に先駆けて胃から分泌される「グレリン」がミトコンドリアを元気にすると発見。メディアに多数登場。