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第24回
臓器の老化④
「臓器の炎症」と老化の深い関係
人間の体は年齢とともに変化し、臓器も例外ではありません。加齢に伴って臓器の機能は徐々に衰えていきますが、日常生活の工夫によってその進行を緩やかにすることは可能です。特に私たちの研究チームは、脂肪分の多い食事を摂り続けると腸に炎症が起こり、バリア機能が障害されて腸内細菌の毒素が全身にまわることで、本誌で何度も危険性をうったえてきた「メタボリックシンドローム」を起こすことを2016年に明らかにしました。最近では、「臓器の炎症」は老化と密接に関係していることが常識になってきています。
加齢とともに増える炎症リスク

炎症は、体が何らかの負担や異常を感じた際に起こる防御反応です。若い頃は体力や代謝が高く、多少の無理をしても臓器がそれに応じて機能を維持してくれます。しかし年齢を重ねてくると、同じような生活でも臓器の処理能力が追い付かず、小さな炎症が積み重なってしまうことがあります。このようなリスクを減らすためには、まず「過食」を避けることが基本です。必要以上にエネルギーを摂取することは、肝臓や膵臓などの臓器に負担をかけ、炎症の原因になります。また、偏った食事もよくありません。特定の食材に頼るのではなく、様々な栄養素をバランスよく取り入れることが重要です。ただ、大切なのは「完璧を求めないこと」です。ちょっとした意識の変化でも、積み重なれば確かな成果につながります。

原稿執筆
慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
伊藤 裕(いとう ひろし)先生
京都大学医学部卒業後、ハーバード大学、スタンフォード大学医学部博士研究員を経て、慶応義塾大学医学部教授を務める。2003年に世界で初めて「メタボリックドミノ」を提唱。世界に先駆けて胃から分泌される「グレリン」がミトコンドリアを元気にすると発見。メディアに多数登場。
バックナンバー
- 第24回 臓器の老化④
- 第23回 臓器の老化③
- 第22回 臓器の老化②
- 第21回 臓器の老化①
- 第20回 高齢者と食事の栄養④
- 第19回 高齢者と食事の栄養③
- 第18回 高齢者と食事の栄養②
- 第17回 高齢者と食事の栄養①
- 第16回 認知症とミトコンドリア③
- 第15回 認知症とミトコンドリア②
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- 第13回 ミトコンドリア健康長寿法④
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- 第10回 ミトコンドリア健康長寿法①
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- 第3回 1,000種類、100兆個以上の腸内細菌
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