第3回

自律神経強化法と交感神経・副交感神経バランス調整法

自律神経系を活性強化することが、セルフケア、セルフヒーリングの第一歩。

セルフケア、セルフヒーリング(自分自身で体をケアする、癒す)のためには、重要度の高い自律神経の交感神経・副交感神経をバランス良く強化することが大切です。これにより免疫防御系や内分泌ホルモン系も活性化され、自己治癒力が高まります。

自律神経系の制御には、ヨガ、気功、経絡刺激、アロマ療法などに多くの技法があります。例えば、深く速い呼吸をするだけで交感神経は活性化しますし、その後ゆっくり深い呼吸を続けるだけで副交感神経は活性化します。アロマ療法でしたら、ラベンダー、ローズなどのエッセンシャルオイルを嗅ぐだけで、副交感神経優位となり心が安らぎ、ストレスも解消できます。どんな技法も続けることで成果が出ますが、今回は簡便で即効性や再現性に優れている「爪揉み」、そして特に「耳ひっぱり」を推奨したいと思います。

経絡・経穴、神経・血管が集まる指・趾、耳への刺激は、自律神経系へ大きな効果をもたらす。

昔から庶民の知恵で、手こすり、足こすり、耳こすりは、寒いとき、イライラするときの手当、癒し法として実践されてきました。手指、足趾、耳は神経・血管に富み知覚が鋭敏ですし、全身の臓器や組織に関係する重要な経絡、経穴が集まっていますので、これらを刺激するだけで自律神経のバランスを整え、交感神経優位の「闘争と逃走」から、副交感神経優位の「休息と消化」状態へと心身を導き寛がせます。身体は温かくなり、血圧や脈拍も落ち着き、胃腸・肝臓の調子も好転し、さらに感染予防やガン抑圧に関係あるリンパ球、NK細胞も増加して免疫力も強化されます。

爪揉み療法(福田稔・安保徹氏法)

爪揉みは、手指と足趾の爪の生え際角にある「井穴」という重要なツボ周辺を親指と人差し指の先端で挟み、痛気持ちいい程度の強さで十秒ぐらい挟みもみして刺激する技法です。一日に二~三回、毎日しても良いです。

指によって効果は変わり、親指は呼吸器(アトピー、咳、喘息など)、人差し指は消化器(胃潰瘍、肝疾患、過敏性腸症、大腸炎など)、中指は耳科(耳鳴り、難聴など)、小指は脳神経、循環器、胃腸、内分泌、泌尿器、婦人科などの疾患からうつ、不眠、自律神経失調、認知症、パーキンソン病などにも対応しているようです。薬指は交感神経活性化に関わるので、原法では刺激禁止ですが、私は軽く揉んでバランスを整えたりします。


出典:『免疫を高めて病気を治す「爪もみ」療法DVDブック』より

耳ひっぱり神門メソッド(飯島敬一氏法)

●神門ゾーン
耳の上部。耳ひっぱりで中心となる「神門」があるゾーン。自律神経を整えて脳にスイッチを入れる。
●肩首ゾーン
耳の真ん中。首や肩に対応。首から肩の血流をよくする。
●頭ゾーン
耳たぶ。頭に対応。脳の血流をよくする。
※各ゾーンを少し強めに3回外側に向け引っ張る。

耳とその周辺には全身の臓器、組織に関わる多くの経絡に加えて、動眼、顔面、舌咽、迷走神経など副交感神経の分枝があります。本メソッドは神門研究家の飯島敬一先生が開発された技法です。耳を三部に分け、重要なツボ「神門」のある上部を神門ゾーン、中部を肩首ゾーン、下部を頭ゾーンと呼び、親指、人差し指で上から順番に三つのゾーンをやや強めに挟み、少しこすりながらひっぱります。それを一セットとし三クール繰り返します。

これだけで自律神経のバランスが整い、痛み、耳鳴りやうつ状態など、様々な心身の不調の改善、免疫機能や内分泌機能の増強に繋がります。特に神門というツボは、従来から痙攣発作、頭痛、歯痛などに特効と言われていますし、計算能力、運動能力などの能力開発、ダイエットやスリム化にも有用です。これに呼吸法などを併用すると更に強力なツールとなるでしょう。私自身、この技法と肉・脂肪分を控えた野菜・玄米中心の食事療法で九キロ減量できました。スリムになってからは高血圧傾向も改善し、癇癪もおきなくなったという経験もあります。

病気やご高齢で、指が不自由な方には耳こすりがお勧めです。手掌を耳介※に被せて優しく三十回から六十回ぐらいこすります。こすり終わっても、手は耳から離さないで、耳を数分温めます。心身が癒され、幸せを感じられるでしょう。

現代人の多くはストレスを抱え眠れない、大気汚染に浅い呼吸、偏食にジャンクフードの食べ過ぎ、運動も休養も足りない、静かに天を仰いで瞑想することも無い…病苦にならないのが不思議です。自分で出来るケア、養生法も考えてみましょう。次回は医食同源、食事と栄養療法を中心にお話しします。

広島大学名誉教授 土肥雪彦先生 原稿執筆

広島大学名誉教授/県立広島病院名誉院長/あかね会老健シェスタ施設長
土肥 雪彦(どひ きよひこ)先生

1960年広島大学医学部卒業。広島大学医学部教授(第2外科学)、広島大学医学部付属病院長、日本肝移植研究会会長、県立広島病院長、中国労災病院長、医療法人あかね会土谷総合病院顧問などを歴任。現在あかね会老健シェスタ施設長。