健康コラム
健康に関する情報や知っておくと役に立つ情報等を医師の視点からお伝えします。
第1回

健康とは「心身すこやかで、幸せな状態」。

病気を「癒し・治す」主役は患者さんご自身、自己治癒力。医師は診断・治療するだけ。

大阪で生まれ広島に疎開、九歳での被爆体験をきっかけに医師を志した私は、これまで半世紀以上、医療の現場に携わってまいりました。広島大学卒業後は米国へ留学、人工透析療法の第一人者であったワシントン州立大学教授B・H・スクリブナー先生に師事し、世界最先端の現場で日夜勉強させていただきました。またコロラド大学デンバー校では、スターズル教授の世界初・肝移植成功例に遭遇し、涙が出るほど感動したことを覚えています。それが切っ掛けで始まった臓器不全医療が発展し、今広島大学の肝移植例は約二百五十例、腎移植は関連施設を含めると約七百例、臨床成績も研究実績も世界のトップクラスですから嬉しいことです。第一走者としての私の役割は果たせたように思います。

戦後、欧米に追い付け追い越せと頑張ってきたおかげで、日本では全国民が平等、気軽に高水準の医療を受けることができます。一方、最近気がかりなのは、多くの医師、そして患者さんが、自分のできること、やるべきことが十全に把握できていないという現実です。本来、医師は体調不良を訴える方を検査し、病気と分かれば治療する、それと同時に病の予防や心のケアなどに尽力する。そして、治療を受けた後で「癒し・治す」のは医師ではなく、“患者さんご自身、自己治癒力”です。

薬や手術以外の健康法として、セルフケア、セルフヒーリングを指導。

しかし現実には、ほとんどの医師は「自分が病気を治す、治した」と思い込んでいます。長年、医学現場で治療にあたっていた私もその一人で、そこに気付くまでに時間が掛かりました。気付かせてくれたのは、今は亡き妻です。私が広島大学を退官する年に、彼女が胃がん手術後7年目で遠隔転移を起こし、食事もとれなくなってしまいました。抗がん剤、放射線、免疫細胞療法も試みましたが効果が得られず、モルヒネで痛みはとれても心身の苦悩で眠れない状況に陥り、私はお手上げでした。しかし、見かねた娘たちが独学で、アロマを使い、腹部や胸のツボなどを温め、マッサージをするなど手当てをしていました。

すると、そんな簡単なことで妻の心身の苦悩が和らいでいったのです。私はそのことに強い感銘を受けました。この経験をきっかけに、本当に患者さんの苦悩を和らげ、癒せる有用な方法を見出し、患者さんに役立てたいと考え、多くの先達を求め学びました。今では、患者さんご自身ができる「セルフケア、セルフヒーリング技法」として、①呼吸法、気功やヨガ、経絡刺激などを応用したもの、②ベッドで出来るボディワーク法(土肥法)、③代替医療の利点と問題点(漢方薬、サプリメント、ハーブなどの摂り方)、④食事療法の指導も行っています。玉石混交の中から自分に合った良いものを見つけることが重要ですし、見つかって直ぐ効果が得られるというものではないので、良質な助言と少々忍耐と継続持続の意思も必要ですね。

皆さんが飲んでいるJWティーもそうです。私はJWティーで、ジェイソンさんのストーリーに登場した牧師さんと同じ体験をしたのですが、1回飲んだだけではその素晴らしさに気付くことはできなかったでしょう。JWティーを紹介してくださった方から懇切な助言とJWティー1ヶ月分をいただいたので、自分の体調を定点観測することができたのです。これまで食養、漢方等の代替医療は科学的根拠が不十分だといわれ、医療現場で積極的に取り入れられてきませんでしたが、最近は基礎・臨床研究が進み、大いに期待できそうです。

「心身一如」、肉体と精神は一体のもので分けることはできない。

「健康」とはどのような状態を指すのでしょうか。世界保健機関(WHO)は、「身体的、精神的、社会的に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」と定義しています。つまり、心身がすこやかな状態であることが重要なのです。仏教の世界でも昔から「心身一如」(肉体と精神は一体のもので分けることができず、一つのものの両面である)と言います。

翻って現代の医療現場を見ると、ストレスが原因で体の病気を発症しているケースが多いように思われます。例えば、生活習慣病のきっかけとしてよく取り上げられる食べ過ぎや睡眠不足なども、強いストレスや弱いストレスが持続することなどが起因となり、不摂生な生活につながっていくことも少なくありません。そこで「心の問題を解決しましょう」となるのですが、実はそれが一番難しいですね。皆さんも、自分の心を自由自在にコントロールできたらどれだけ良いか考えたことはありませんか。

ストレスで心身が弱ってしまった時、私なら体を動かす、手を当てるから始めます。もともと体育会系だったこともありますが、若い頃は山に登ったり、中年以降は気功やヨガの技法を取り入れたりして、体の面からアプローチしてきました。体を動かすこと、手を当てる、一撫でするだけで頭がスッキリし癒やされたという経験はありませんか。そして逆に、心身の疲れを感じた時に、楽しかった思い出に耽ったり、ぼんやり瞑想するだけで心身のバランスが整い、疲れが軽くなる、これも可能なことです。心身一如、どちらからでも対処できる技法を取得しておけば、いろんなアプローチができて本当に便利です。 次回は、人間に本来備わっている自然治癒力とはどのようなもので、高めるためにどう考え、何をするべきかなどから、お話ししたいと思っています。

広島大学名誉教授 土肥雪彦先生 原稿執筆

広島大学名誉教授/県立広島病院名誉院長/あかね会老健シェスタ施設長
土肥 雪彦(どひ きよひこ)先生

1960年広島大学医学部卒業。広島大学医学部教授(第2外科学)、広島大学医学部付属病院長、日本肝移植研究会会長、県立広島病院長、中国労災病院長、医療法人あかね会土谷総合病院顧問などを歴任。現在あかね会老健シェスタ施設長。