健康コラム
健康に関する情報や知っておくと役に立つ情報等を医師の視点からお伝えします。
第4回

医食同源(食事と栄養療法)

食べ物は天地の恵み、生きとし生けるものからの贈り物です。

医食同源と言うように健康な生活を送るうえで“食養法”は医療と同等、時にはもっと重要かもしれません。大切なポイントは、まず感謝、そして体に良い食品をバランス良く、十分咀嚼してから摂取し、体調に合わせて調節し食べ過ぎないよう心掛けることです。

アメリカ国立がん研究所(NCI)が推奨したがん防止食品約40種を参考にして、がん・老化や生活習慣病防止に良さそうな食品を選ぶと「ニンニク、キャベツ、大豆、しょうが、ワサビ、人参、セロリ、キノコ、海藻類、タマネギ、ウコン、黒コショウ、玄米、納豆、卵、レモン、トマト、ナス、ピーマン、ブロッコリー、JWティー、緑茶、珈琲、ほかに抗酸化物質・ポリフェノールに富んだ果物、ナッツ」などがお勧めでしょう。

一方、できるだけ避けたい食品は「白砂糖、完全精米した白米、パンや麺類などグルテンを含んだ小麦食品、市販食塩、動物性油脂、トランス脂肪酸を含有するマーガリンやショートニングなどの加工油脂」などです。慢性炎症や生活習慣病の原因になりますし、特にグルテンの多い小麦食品は腸管粘膜を損傷し、アレルギー誘引物質や微生物など有害物質が体内に入りやすくなり、腸の炎症疾患、アトピーや花粉症など自己免疫疾患を惹起します。小麦がダメだと食べるものがなくなるという声が聞こえてきそうですね。

食養、漢方、ハーブ等、代替医療分野も科学的な分析が進み活性化?

これまで食養、漢方、ハーブ等の代替医療は科学的根拠が不十分とされ医療現場で積極的に取り入れられてはきませんでしたが、近年は基礎・臨床研究が進み、食養法やサプリメントの作用機序まで簡単に解明できる時代になりました。

例えばローヤルゼリーが老衰のローマ教皇を救った話は有名です。また実は蜜蜂の女王蜂と働き蜂の遺伝子は全く同じで、ハチミツで育てれば働き蜂、ローヤルゼリーで育てると女王蜂になり体長は二倍に、寿命は二十倍近くに達します。以前は説明できなかったこの不思議な現象も、今では「ロイヤラクチン」という成分が細胞分化に関わる遺伝子をエピジェネティク(後天的)に活性化させることで起こることが判明しています。

日本の食品では「まごわやさしい」がバランスの良いお奨め食品。

一九七七年にアメリカ上院・栄養問題特別委員会が発表した『マクガバンレポート※』に代表されるように、健康的な食生活に注目が集まる中、日本の伝統食が世界的に見直されました。歴代の食材にも照らし合わせてみると「まごわやさしい」がお奨めのようです。

  • 大豆、あずき、納豆などの豆類。
    タンパク質、マグネシウムの摂取に。
  • ゴマ、クルミなどナッツ類。
    オメガ3脂肪酸、ビタミンEが豊富。慢性炎症抑制。
  • わかめ、昆布、のりなど海藻類。
    ヨード、カルシウムが豊富。甲状腺機能を高める。
  • 野菜、根菜など。
    ベータカロテン、ビタミンCなど抗酸化物質豊富。
  • 青魚など魚介類。
    タンパク質、オメガ3脂肪酸、亜鉛が豊富。慢性炎症抑制。
  • しいたけ、まいたけなど茸類。
    多糖類、食物繊維が豊富。免疫力を高めガン防止。
  • キクイモ、山芋、小芋などイモ類。
    食物繊維、炭水化物が豊富。腸内善玉細菌の増加。

これに発酵食品や果物を入れると素晴らしくバランスの良い構成となります。近所のお店で簡単に手に入りそうなものばかり、これで幸せ百寿が迎えられたら嬉しいですね。

炎症増強作用のあるオメガ6脂肪酸は控えめに、炎症緩和作用のあるオメガ3脂肪酸をしっかり摂取。

戦後、日本人の食習慣は大きく様変わりし、昔ほど木の実や魚介類を摂らなくなり、インスタント食品の摂取が増えています。そのため、必須脂肪酸同士でも炎症増強作用のあるオメガ6脂肪酸(サラダオイル、てんぷらオイル)の摂取量が増える一方、炎症を和らげるオメガ3脂肪酸(青魚に含まれるDHA・EPA、亜麻仁油・しそ油)の摂取量が極めて少なくなっており、憂慮されます。オメガ3脂肪酸と、昨今話題のオメガ7脂肪酸(マカダミア油)の摂取は慢性炎症の制御や、アトピー、炎症性腸疾患、糖尿病、動脈硬化、高血圧、がん、認知症など多くの病気の予防・治療、美容にも有効と言われ期待できます。

最近、「オーソモレキュラー療法(分子整合栄養医学)」もブームです。血液・尿の精密検査で不足している栄養素すべてを見つけ出し、食品、サプリメントなど用いて補充調整して治療する施設も増えています。

出来ることからやってみる。
ミニ断食、天然塩と良い水、JWティー・バイオプラスの活用など。

栄養学・食養学の専門家や栄養士さんと上手に付き合い、新しい情報を手に入れることも重要ですが、青汁だけの微食、殆ど無食で生きている方もおられる時代です。次々変わる情報に振り回されないで、まずは出来ることからやってみる姿勢が大切でしょう。

時折ミニ断食するだけでもNK細胞やオートファジーは活性化し、がん免疫能や細胞内浄化作用は強化します。食塩を良質な天然塩(岩塩、海塩)に代えれば必須ミネラルはほぼ補えます。良い水を補給しJWティー、バイオプラスを活用すれば乳酸菌等で腸内フローラも整い有毒物は排出され心身は癒されます。いずれも簡単に出来て大切なことですね。

加えて「まごわやさしい」くらいの視点で、ホドホドに頑張ってみる、これが健康と長生きのコツかもしれません。

広島大学名誉教授 土肥雪彦先生 原稿執筆

広島大学名誉教授/県立広島病院名誉院長/あかね会老健シェスタ施設長
土肥 雪彦(どひ きよひこ)先生

1960年広島大学医学部卒業。広島大学医学部教授(第2外科学)、広島大学医学部付属病院長、日本肝移植研究会会長、県立広島病院長、中国労災病院長、医療法人あかね会土谷総合病院顧問などを歴任。現在あかね会老健シェスタ施設長。