第6回

病気を呼び込むライフスタイル③

人々が利便性と利益を追求し続けた結果、あらゆる生活空間で知らず知らずのうちに体はダメージを受け続け、健康を害することにつながっています。今回は、病気を呼び込むライフスタイルとして、人間の生活を支えてくれる微生物である菌類を中心にお話させていただきます。

腸内には約1000兆個もの菌が住んでいる

皆さんのお腹にある腸の長さは約7mで、ひだひだを伸ばした表面積はテニスコート1面分にもなります。ここに、種類にして1000種、数にしておよそ1000兆個、重さにして1kg超にもなる菌が住んでいます。さながら、菌の群生がお花畑のようだということで「腸内フローラ」とも呼ばれ、以前NHKで放映されました。

この菌たちが様々な病気の予防に繋がることが分かってきました。この腸内細菌は善玉菌15%、悪玉菌15%、日和見菌70%の3つに大別され、善玉菌の勢力が強まると日和見菌は善玉菌と同盟を結び、悪玉菌が優位になると日和見菌は悪玉菌と同盟を結んで勢力は逆転してしまいます。なるべく善玉快便を目指して菌の恩恵を最大限いただきましょう。
大便がすべて食物残渣と思われている方も多いでしょうが、実は1/2が腸内細菌、1/4は脱落した腸粘膜、食物残渣が1/4程度なのです。ですから、便を見ることは腸の中の菌を見ていることにほかなりません。悪玉菌が優位になると、便は腸内で腐敗して悪臭を放ち、色も黒っぽく、硬くなり、便秘になます。腐敗物質に接触し続ければ、腸の粘膜がガン化するのも不思議ではありません。便秘による肌荒れも腐敗物質を再吸収していたら当然ともいえます。腐らせず、発酵させることが健康へ繋がります。

ちなみに、一般的な便秘への対策を簡単に表すと、「水分を摂る」「繊維質を摂る」「腸内細菌を善玉化する」「運動する」「便意を我慢しない」「リラックスする」「食品添加物を減らす」の7つです。

皮膚にも約1兆個の菌が住んでいる

皮膚にも約1兆個の細菌が住んでいます。例えば、アトピー性皮膚炎の方の皮膚ですと皮脂も少なく、常在菌も住めない砂漠の状態です。皮膚は引っ掻いて傷をつけないようにして、界面活性剤で皮脂を洗い流さず、常に保湿を心掛けなければいけません(常在菌を育む)。

皮膚科から処方されるステロイド(副腎皮質ホルモン)入り軟膏や免疫抑制剤軟膏は必要最低限にします。ステロイドはその時だけ劇的に改善しますが、必ずリバウンドします。そして、効きが悪くなるとどんどん強いステロイドが処方されていきます。免疫抑制剤軟膏も文字通り使い続ければ皮膚の免疫機能が低下して、感染症や皮膚癌の危険性を生じると「薬剤添付文書」にも記載されています。 要するに、この手の薬剤は麻薬中毒と同じで使い始めるとやめられなくなり、副作用にまみれて効果が発揮できなくなると、医師に「お手上げです」と言われて放り出されます。なぜ、そんな薬が平気で処方されるかというと、現代医学ではそれしか症状を緩和する手段が無いためで、目の前の患者さんが今だけ喜べばそれでよいからです。症状を緩和できない皮膚科の評判は落ちるでしょうから、医師も目先の努力で必死なのです。

先ずは、最初から治す手段がなく、治療という名の緩和手段に過ぎない事実を理解しましょう。薬剤で抑えているうちに、薬要らずの体へ変えることが医療との正しい関わり方だと思います。このように、私たちは体の中の腸に住んでいる腸内細菌群と体の外の皮膚に住んでいる常在菌群によって体が隙間なくコーティングされ、我々は守られているのです。

次回からは、3号連続でお話したライフスタイルをどう変えていくかを述べていきます。

脳神経外科専門医 田中佳先生 原稿執筆

脳神経外科専門医
田中 佳(たなか よしみ)先生

1960年、東京都生まれ。
1985年に東海大学医学部を卒業後、同大学附属病院脳神経外科助手を経て市中病院にて急性期医療に長年携わる。
日本脳神経外科科学会認定専門医として、脳神経外科診療を行いつつ、予防医学の教育講演活動に取り組む。