第2回

日本人の医療をめぐる状況

現在、日本で外来患者の約半分が生活習慣病関連の病気を患っており、その影響は若年層にも広がっています。今回は自分自身による毎日の生活のケアがいかに、健康を守るうえで大切かをお話しさせていただきます。

高校生の4割超が生活習慣病予備軍

今、日本でどのような外来通院患者さんが多いのか、疫病別ワースト10を見てみますと、高血圧、糖尿病、高脂血症の生活習慣病と、加齢に伴うと考えられる白内障や骨格系の病名が並びます。脳梗塞は動脈硬化、慢性腎不全は糖尿病の延長線上なので、ワースト10のうちの半分が生活習慣病関連と言えるのです。
2009年4月11日の朝日新聞に、高校生と生活習慣病を調べた記事がありました。千葉県・富山県・鹿児島県の3県調査ですが、高血圧・内臓肥満・高中性脂肪・低善玉コレステロール・空腹時高血糖の5項目のうち、男子44%、女子42%が1項目以上該当するというのです。3項目該当する高校生も男子5%、女子3%おり、ファーストフードや糖質の多い清涼飲料水、お菓子ばかりを食べることが原因ではないかと推測できます。
次世代を担う若者が10代でこの体では、まるで砂の上に建てられた不良建築物件のようです。お子さんの食生活をしっかり見直さないと、還暦を迎えられないばかりか親が子供の介護をする羽目になってしまいます。

外来患者数疾病別ワースト10

順位 病名
1 本態性高血圧(症)
2 脊髄障害
3 関節症
4 ぜんそく
5 高脂血症
6 糖尿病 (インシュリン非依存症)
7 椎間板障害
8 白内障
9 脳梗塞
10 慢性腎不全

参考文献:2005年患者調査(厚生労働省)による。
※歯科、感染症、精神、皮膚疾患を除く

生活習慣病とは“自己管理欠陥症”

第二次世界大戦後に一気に生活習慣病が増えており、この先の平均寿命は今をピークにどんどん下がっていくと予測できます。
現在の100歳前後の方が生きた時代を考えてみますと、明治後期から大正初期で、子ども時代の食生活と自然環境はとても豊かな時代だったでしょうし、車も農機具もなかったので体のつくりも丈夫であったことでしょう。その方たちと、今の自分たちを同じ体だと考えてはいけないのです。

現在の生活習慣病という病名は、かつて成人病と呼ばれていました。「年齢が上がると起こる病気」へと変化したわけです。これをアメリカへもっていきますと、“自己管理欠陥症”へと呼び名が変わるほどです。現代の生活環境を踏まえて、自らの健康管理をする必要があるのです。運動すること、食事の摂り方など、自分の健康は自分で守らなければなりません。

次回は、「健康と病気についての考え方」をテーマにお話させていただきます。

脳神経外科専門医 田中佳先生 原稿執筆

脳神経外科専門医
田中 佳(たなか よしみ)先生

1960年、東京都生まれ。
1985年に東海大学医学部を卒業後、同大学附属病院脳神経外科助手を経て市中病院にて急性期医療に長年携わる。
日本脳神経外科科学会認定専門医として、脳神経外科診療を行いつつ、予防医学の教育講演活動に取り組む。