
「目に見えない世界」を映像で描き続けてきた映画監督・荻久保則男さん。胎内記憶をテーマにした『かみさまとのやくそく』を通して、「人は何のために生まれてくるのか」という問いを投げかけてきました。最新作『伝授(でんじゅ)』では、日本文化に息づく「志」に迫ります。作品に込めた想いから、JWティーとともに心と体を整える日々の習慣まで、その歩みと人生観を伺いました。
映像で描きたかった「目に見えない世界」
私はもともと劇映画やドラマを学びたいという思いで映像の世界に入りました。しかし、ニュースの現場を入口として、人の生き方や真実を映し出すドキュメンタリーの奥深い魅力に惹かれていったのです。ドキュメンタリー制作のスタッフとして活動するうち、テレビというメディアにはスポンサーや放送の枠組みがあるため、扱うことが難しいテーマが存在することを実感しました。私自身が次第に描きたいと強く思うようになっていた「目に見えない世界」は、その代表的なテーマの一つでした。けれども、映画館で上映する映画であれば、その世界に真正面から向き合うことができる―。そんな確信を私に与えてくださったのが、白鳥哲監督との出会いだったのです。
白鳥監督から「見えない世界」をテーマにしたドキュメンタリー映画を製作したいと聞いて、衝撃を受けました。興奮とともに二つ返事でスタッフとして参加させていただきました。七田眞(しちだまこと)先生の『魂の教育』、森美智代さんと甲田(こうだ)療法を描いた『不食の時代』、村上和雄先生の『祈り』、比嘉照夫先生の微生物研究をテーマにした『蘇生』などの作品をワクワクしながらお手伝いさせていただきました。その過程で、「私自身がなぜドキュメンタリーに惹かれていたのか?」が明確になっていきました。カメラを向けたときに、その人から滲(にじ)み出てくる魂というか、一期一会の真実、命の輝きを拾い上げ、後世に残したいと私の魂が願っていたのです。魂を導いてくださった白鳥監督には感謝しかありません。
そして、私なりに「見えない世界」を描きたいという想いを映画化したのが初監督作品、産婦人科医・池川明先生の「胎内記憶」をテーマにした映画『かみさまとのやくそく』でした。
私たちの生まれた使命は「人の役に立つこと」
私が描きたいのは、幽霊や超能力のような非日常の「見えない世界」ではありません。私たちの暮らしのすぐそばにありながら、普段は目にすることのできない「見えない世界」です。例えば、宇宙空間もそうですし、時代劇で描かれる江戸時代も、私たちは実際に見ることはできませんよね。そう考えると、「見えない世界」は決して特別なものではなく、私たちの身近に数多く存在しています。その中でも、胎内記憶は私たちの人生に最も近い「見えない世界」の一つではないかと思いました。池川先生のお話では、3~4人に1人の子どもが胎内での記憶を持っていると言います。実際に胎内記憶を語る子どもたちがいたりして、それは決して空想や特別な世界の話ではありません。とても身近なテーマなのです。そこに私は強く惹かれました。
そさらに印象深かったのは、「子どもたちに『何のために生まれてきたの?』と尋ねると、多くの子どもが『人の役に立ちたいから』と答える」という池川先生のお話でした。私たちは皆、赤ちゃんとして生まれ、お母さん・お父さんに育てられます。その人生の始まりにある純粋な願いが“誰かの役に立ちたい”だとしたら、それは人生の本質を示す大きなヒントではないでしょうか。『かみさまとのやくそく』の上映会は日本国内だけではなく世界各地で開催され、32万人以上を動員。その後、2023年に新たに編集し直した作品が『ママのおなかで笑っていたよ〜パパもだいすき〜』です。妊娠中からお父さんがお腹の中にいる赤ちゃんに話しかけることで、赤ちゃんはお父さんの声に安心感を覚え、生まれてからのお母さんの子育てを支えられる。夫婦が協力して子育てをすることが、家庭全体の幸せにつながっていく。そのメッセージをより強く伝えたいと思い、新たな構成へと作り直したのです。これまで21の国際映画祭にノミネートされ、フランスやインドなど5つの映画祭で受賞しました。私自身、その理由は「誰もが赤ちゃんとして生まれてきた」という人類共通のテーマだからではないかと感じています。国や文化を超えて共感できる物語だからこそ、多くの人の心に届いたのだと思います。
「志」を次の世代へ。伝える映画『伝授』
私の最新作は『伝授~共育(きょういく)の呼吸~』です。この作品のテーマは、日本文化に息づく「志」です。志とは、単なる野望や夢ではありません。「人の役に立ちたい」という願いそのものです。英語の“Ambition”や“Dream”では表現しきれない、日本独自の精神文化だと感じています。漢字で士(さむらい)の心と書きますので、まさに「サムライスピリット」と表現して世界に広げても良いかもしれません。『かみさまとのやくそく』で描いた「人は何のために生まれてくるのか」という問いと、『伝授』で伝えたい「志」は1本の線でつながっています。誰かの役に立つことに喜びを感じ、その想いを次の世代へ受け継いでいく。それが志であり、人が生きる意味でもあると考えます。
この作品は、「志教育」に取り組む日本学ユニバーシティ学長・出口光(でぐちひかる)さんと出会ったことが大きなきっかけになりました。出口さんを中心に行う、小学生から23歳までの若者が志を語るイベントをお手伝いする中で、志を持つことで人生が変わっていく姿を数多く目の当たりにし、その力を映画で伝えたいという思いが強くなったのです。映画には、ナレーション・榎木孝明さん、題字・片岡鶴太郎さん、歌唱・高橋洋子さんなど多くの素晴らしい方々が参加してくださいました。それぞれが作品の理念に共鳴し、ご縁がつながって実現したもので、私自身も不思議な導きを感じています。『伝授』はつくったら終わりの作品ではありません。これから多くの人に観ていただき、志の輪が広がることで作品も成長していくと考えています。
心と体を整えるJWティーと呼吸法
JWティーは、池川先生から教えていただきました。私が健康のために毎日欠かさず続けていることの1つがJWティーを飲むことです。1袋を15分ほどじっくり煮出して飲んでいます。朝一番に口にすると、体にじんわりと染み渡り、全身を巡っていくような感覚があります。最初は気が向いたら飲む程度でしたが、池川先生や脳神経外科医の篠浦伸禎(しのうらのぶさだ)先生が日頃から愛飲されているのを見て、私自身も毎日の習慣になりました。出張先で飲めない日があると疲れを感じるなど、今では欠かせない存在です。健康のために心掛けているのは、お茶だけではありません。毎日3~5分ほど丹田を意識した呼吸法を行い、息をしっかりと吐き切ることで心身を整えています。さらに最近はマインドフルネスも取り入れるようになりました。短い時間でも静かに自分の心と向き合うことで精神が安定し、心と体を健やかに保ってくれると実感しています。
私が映画で伝え続けている「胎内記憶」と「志」という2つのテーマは根底でつながっています。どちらも、自分ひとりではなく、誰かの幸せを願い、人の役に立つことで本当の喜びが生まれるという考え方です。その想いは世代を超えて受け継がれ、自分の命が尽きた後も未来へとつながっていく。日本ならではの「志」の文化を、胎内記憶という優しい子育ての視点とともに、これからも多くの方へ伝えていきたいと思っています。
荻久保 則男 さん
映画監督・映像作家。1966年長野県生まれ。15歳で8ミリ映画の制作を始め、20歳から照明・録音・撮影スタッフとして数多くの劇映画やドキュメンタリーに携わる。2014年に株式会社熊猫堂(くまねこどう)を設立し、『かみさまとのやくそく』シリーズをはじめ、『ひかりの国のおはなし』『ママのおなかで笑っていたよ』などを監督。2026年、日本文化の精神性や「志」を探究する最新作『伝授(でんじゅ)~共育(きょういく)の呼吸~』を製作。








