阿部 博幸 先生(東京キャンサークリニック理事長/国際個別化医療学会理事長)インタビュー

スタンフォード大学やカリフォルニア大学の客員教授を歴任されたほか、がん治療と予防への貢献が米国研究機関から表彰されるなど、世界の医学界を牽引してきた阿部博幸先生。現在は免疫療法の第一人者として、80歳を超えてなお精力的に最先端医療の研究に取り組む阿部先生に次の時代へ向けた医療の在り方、各人が健康を維持する上で大切にすべきことなどを伺いました。

患者のタイプにあわせて最適な治療法を選択する「個別化医療」に取り組む。

私の現在の専門は「腫瘍免疫学」になります。体本来に備わる免疫力を活用してがんの成長を抑制する研究です。免疫とは「疫(病気)」を「免れる」、つまり病気にならないように体を守る仕組みのことです。体には病気を引き起こす様々な細菌やウイルスが侵入したり、細胞が変異を起こし、がん化したりします。こうした異物を排除しようとするのが免疫力というシステムです。この免疫力を研究し生まれたのが免疫療法です。
免疫療法に取り組み始めたのは2000年頃。当時、私はがんを専門にしていなかったのですが、「あの治療をしてもダメ」、「この治療法もダメ」、「助かる方法はありませんか」と、いろいろと遠方からも相談に来られる方がいらっしゃって。“がん難民”になってしまった方々を何とか救えないかと考えたのが最初です。もともと私はアメリカで心臓外科医として患者さんの胸を切開したり、冠動脈バイパスを作ったりと手術をメインに行っていましたが、それらは患者さんにものすごく負担を強いますよね。そのため、そういうことをしないで治せる方法はないかと循環器内科に移り、クリーブランド・クリニックのメイソン・ソーンズ博士に師事し、冠動脈造影技術を習得する一方、心筋梗塞や狭心症の患者さんの胸を切開せず太ももの付け根などから挿入した風船で血管の狭くなった部分を拡げる「バルーン療法」の開発にもあたっていました。その治療法が確立した段階で日本に戻り、一般内科の先生方が実践できるように普及に尽力してきました。
東京キャンサークリニックは、再生医療(人の体の「再生する力」を利用して、元どおりに戻すことを目指す医療)を中心にがんの予防と治療を行うクリニックでありますが、QOL(Quality of Life:生活の質)を高め健康長寿をサポートするクリニックでもあります。「患者さんのための医療とは何か」を考え続け、個々の患者さんのゲノム(*1)やバイオマーカー(*2)を根拠とし、ライフステージ(人生の段階)や生活習慣、人生観、現在の身体的問題などあらゆる点を考慮して、一人ひとりの患者さんにあわせて最適な治療法を選択する真の意味での「個別化医療」に取り組んでいます。

*1 「遺伝情報の全体・総体」を意味するドイツ語由来の語彙。
*2 血液や尿などの体液や組織に含まれる、タンパク質や遺伝子などの生体内の物質で、病気の変化や治療に対する反応に相関し、指標となるもの。

▲ JWティー横の白いカップは、阿部先生のクリニックへ勉強に訪れたタイの王様の主治医から手渡されたもの。

生活習慣病は2、30年かけて作られる。次の時代は「予防医学」が中心に。

元来、治療において医師が出来るのは患者さん個々人が持つ、治ろうとする力にアプローチすることだけ。つまり、病気を治すのは患者さんご自身でしかないということです。そして、より強調して伝えたいのは、近代医学は病気の治療ばかりに専念してきたために、予防することが二の次になってしまってきたということ。従って、がんが次の世代、またその次の世代に出るという状況が続いているのです。実際、人間の体の中でがんが作られるのは、CT検査などの診断結果で判明するずっと前。20年も、30年も前からがんは体の中で着々と作られているのです。それは心臓病や認知症も同じ。長い間コレステロールや血圧の値が高いなどの状態が続いたことで最終的に心筋梗塞を引き起こしたりしてしまいます。言い換えれば、十数年も予防する期間があるのに、医師はそこにあまり注目してこなかった。
日頃、私たちは無意識に呼吸をして酸素を取り入れ、血管が脈を打ち、朝に目覚め、日中にはエネルギーに満ち溢れて活動をする、そんな生活を振り返ると感動的ですらあります。身体のバランスを保つため、無意識のうちに体内で細胞や神経、ホルモンなどが24時間365日活発に働いています。与えられた命の尊さと叡智が身にしみるわけです。身体の潜在的な能力に負担をかけ過ぎないように、まずは今の体の状態を振り返り健康状態を保つためにどうするか、それを考えるべきなのです。
これからの時代は「予防医学」が中心になると思います。例えば、今のところ発症してしまうと治療が困難なアルツハイマー病も生活習慣病の一つと考えられるようになりました。早い段階での介入によって、その発症時期を遅らせることや症状の進行を遅らせることが可能になることが分かってきました。私が日本で初めてアメリカから導入した最新の検査でも、血液を調べるだけでアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβペプチドに対する「抵抗力」を測れるようになったのです。ここ10年くらいの研究です。新しい医療の夜明けが近いと感じています。

▲ 手にしているのは留学時代、米国企業と共同で開発した心臓の中の筋肉を切り出すための生検鉗子。

自分の体は自分でメンテナンス、生活で意識すべき大切な7つのポイント。

今後は病院や薬ばかりを当てにせず、各人が自分の体は自分でメンテナンスするという意識を持つことが大切。アメリカでは「ライフスタイル・メディシン(医学)」という新しい医療が既に確立されています。不健康なライフスタイルを変えて、病気を予防・治療しようというものです。意識してほしいのは、①食事、②運動、③睡眠、④排泄、⑤体重、⑥血圧、⑦気力の7つ。
食事に関してですが、現代の日本人は糖質を摂り過ぎているようです。どういうことかというと、我々人類のもととなる存在がアフリカ大陸で誕生し、それが徐々に猿人から人間に近くなり、険しい荒野など食べるものもない場所を通り何万年という途方もない時間を掛けて日本列島に到達しました。そして、その過程で遺伝子がどんどん組み変わり、食料が少なくても生命を維持できるような体に変化したのです。そのため、日本人の多くは太りやすい、肥満遺伝子というのを持っています。少ないエネルギーで生きることのできる「倹約遺伝子」とも言えます。糖質は最も主要なエネルギー源として使われやすく、体や脳を動かす即効性の高い栄養素です。しかし、過剰に摂取してしまうと、余った分が中性脂肪に変換されてしまうので気を付けましょう。一方で、魚や肉などのタンパク質を多めに摂るのは良いと思います。タンパク質は体内で分解されてアミノ酸になり、筋肉や内臓、髪などを構成する成分で、ホルモンや酵素、免疫細胞を作る役割を担います。あと、昔は良くないと言われていましたが、脂質も最近注目されています。エネルギー源であるだけではなく、保温や保湿、正常なホルモンの働きを助けます。糖質を少なくして脂質のエネルギーで活動したほうが効率良いのですが、これもバランス良くとることが重要です。
運動は激しいものではなく、ウォーキングでも十分です。アルツハイマー病であっても、運動する人としない人では進行度が全く異なります。睡眠は最低6時間を確保しましょう。夜に面白そうなテレビ番組が流れるなど、現代人はどんどん夜型になっていますが、良質な睡眠を取るためには副交感神経(体をリラックスさせる働きを司る神経)を優位にしてあげる必要があります。ヨガやアロマテラピーなどを活用するのも良いでしょう。JWティーも同じように気持ちを落ち着けてくれるようですね。ラテン語で「癒す」という意味を持つセージもブレンドされていますから、PCやスマートフォンなど刺激的なものに一日中さらされやすい、現代人に適していると思います。そして、日々快便か、体重が10年前に比べて10キロ以上増えていないか、血圧は適正値か、なども毎日チェックすると良いですね。

お腹の中の腸内細菌は、1つひとつが小さな「薬剤師」。

JWティーを初めて飲んだ時、飲みやすいお茶だなと思いました。ハーブティーと知り、これからの時代に大切な「予防」を考える上で素晴らしいきっかけになるお茶という印象を持ちました。太古の昔から人類はハーブを健康維持に役立ててきたのです。また、腸は最大の免疫器官ということで、これから腸内細菌が喜ぶような発酵食品や食物繊維を摂ることの重要性が益々高まってくると思います。バイオプラスも気に入っています。最近面白い論文を読んで、腸の中にフローラ(お花畑)のように数多く存在している細菌、それら1つひとつが小さい「薬剤師」と表現されていて妙に納得してしまいました(笑)。腸内細菌は脳の伝達物質の生成にも密接な関係をしており、生きる上での「気力」に大きく影響を及ぼしますので、腸の健康を保つのはすごく大切です。健康を意識した生活習慣に出来る限り早い段階で取り組み、健康長寿だけではなく、これからは心の満足度も着目した“幸福長寿”を目指しましょう。

阿部 博幸先生

1938年北海道生まれ。1964年札幌医科大学卒業。慶應義塾大学附属病院にてインターン終了後、米国留学。ハーネマン医科大学にてリサーチ・フェロー、ペンシルバニア大学フィラデルフィア小児病院およびクリーブランド・クリニックにてクリニカル・フェロー修了。順天堂大学講師、日本大学助教授、スタンフォード大学客員教授、カリフォルニア大学客員教授、杏林大学客員教授を経て、1988年医療法人社団博心厚生会を設立。九段クリニック名誉院長、東京キャンサークリニックの理事長を務める。近年は特に「樹状細胞ワクチン」を中心としたがんの免疫細胞治療の研究・臨床に力を入れ、保有する技術について、日本や米国など世界12ヶ国で特許を取得。2002年5月、World Life Research Institute, USA(米国生命科学研究所)より「ガン治療と予防への多大の貢献」に対し、また、Cancer Control Society(米国ガン・コントロール協会)から「ガンと免疫療法に使う生薬の研究における成果」に対して表彰を受けた。2013年4月、国際オーソモレキュラー医学会より「オーソモレキュラー医学の普及への貢献」に対して2013年のHall of Fame(名誉の殿堂入り)の栄誉に授かる。医学博士。一般社団法人国際個別化医療学会理事長を兼務。


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