德永 尚三さん(徳永物産株式会社・代表取締役)インタビュー

兵庫県たつの市で140年続く革づくりの伝統を四代目として受け継ぐ德永尚三さん。革製品は単なる素材を超え、命の一部として感謝を込めて作られています。2019年には香港の国際展示会で世界1,200社の頂点、2023年には東京へ進出するなど新たな挑戦を続ける德永さんに、多忙な日々を支えるJWティーや革製品への想いをお伺いしました。

140年続く革づくりの家業四代目として受け継ぐ

革に向き合う毎日は、静かで地道な作業の連続です。工場に漂うなめしの匂い、ドラムがゆっくり回る音、革に手を当てた時のわずかな湿り気やぬくもり。その一つひとつが、ものづくりの実感となって私の中に積み重なっていきます。

革づくりの協力工場との打ち合わせ風景(兵庫県たつの市内)。
革づくりの協力工場との打ち合わせ風景(兵庫県たつの市内)。

私は徳永物産の四代目。兵庫県たつの市で140年にわたり革づくりをしてきた家業を受け継いでいます。創業は明治18年(1885年)としていますが、書物の記録に残っているのがその年というだけで、実際にはもっと昔からなめし業を営んでいたかもしれません。

職人による手作業で行われる革づくり。後ろの大型装置が「ドラム(タイコ)」。
職人による手作業で行われる革づくり。後ろの大型装置が「ドラム(タイコ)」。

現在の徳永物産はバッグや財布など本革製品の製造が中心で、なめしを始めとした革づくりは協力工場に依頼をしていますが、その工程は多岐にわたります。まず動物の皮の毛抜きを終えたら、なめしに入ります。なめしというのは、簡単に言えば「皮(スキン)を革(レザー)に変える」ための処理で、腐敗を防ぎ、素材を柔らかくするための加工です。革を柔らかくと書いて「鞣す」。古代エジプト時代から行われ植物の樹皮などから抽出した渋(タンニン)をなめし剤として使う「タンニンなめし」、100年ほど前にドイツで開発されタンニンの代わりに塩基性硫酸クロムという化学物質を使う「クロムなめし」、それぞれに特性があり、耐久性や柔軟性に影響します。

染色工程もまた、ただ色を塗るのではありません。粉状の染料を水に溶かし、革と一緒にドラムの中で回転させることで色を浸透させていきます。温度や湿度、季節によって発色が変わるため、職人は感覚を頼りに作業を行います。レシピ通りにはいかない。デジタルでは再現できない、「人の目と手」の世界です。

※なめし・染色などの工程に使用する大型装置。タイコとも呼ばれる。

豊かな水が育んだたつの市の「革産業」

なめしが終わると、脱水、乾燥、ネット張り、仕上げへと進んでいきます。ネット張りというのは、革の形を整えるために行う作業で、まるで洗濯物を干すように革の端を洗濯バサミで留め、しっかりと伸ばして乾かします。1枚1枚が高価な素材ですから、その仕上げにも細心の注意を払います。ちなみに、ドラム1台で2,000万円近く、設置費用を含めると5,000万円にも。大きい会社になると20台も所有します。新たに参入しようと思っても、膨大な資金力がないとできません。三代目、四代目が多いのも、それが理由です。

兵庫県たつの市の皮革の生産高は日本一を誇り、400年の歴史がある伝統産業。たつの市が革の名産地になった背景には、水の存在が欠かせません。素麺(揖保乃糸)で有名な揖保川や林田川の豊かな硬質の水が革生産に適しており、川の衛生処理も非常に高水準なことから、今でも川沿いにいくつもの皮革工場が並んでいます。私たちの目の前を流れる川が、この土地に革産業を根付かせたのです。江戸時代から続くその灯を消さぬよう、現在は地元の若手で、普及活動に取り組んでいます。

世界1,200社の頂点へ独学デザインの革製品

うちは決して大きな会社ではありません。でも、そのぶん柔軟にいろんな革製品を扱うことができるのが強みです。素材の選定から仕上げまで、必要に応じて外注や協力工場と連携しながらお客様の求める革製品をつくりあげていきます。大量生産ではなく、必要なものを、必要なだけ。まさに「顔が見えるものづくり」です。

2019年には香港の革製品・素材の国際展示会「アジア・パシフィック・レザー・フェア(APLF)」のスモール・レザー・グッズ部門でグランプリを獲得しました。1,200社の中の頂点です。デザインはすべて私が担当しています。完全に独学ですが、イラストレーターでデザインし、型屋さんに金型をつくってもらいます。昔から好きで続けてきたことが評価されたのは本当に嬉しかったです。
2021年には、台湾政府系デザインアワード「金点設計奨(GoldenPin Design Award)」にも挑戦。当時店舗のあった神戸市の代表として出展し、最終選考には残れませんでしたが、こうした国際的な場に立てたことも大きな経験です。

座面張替えのビフォーアフター

現在は、たつの市だけではなく東京にも拠点を設けています。実は2017年に一度トライしたものの半年で撤退。しかし、2023年1月、もともとあった神戸のお店を閉じて東京に再び挑戦しました。自社の本革ブランド「コモドス」の販売店として、レザーやファスナー、ステッチ、裏地が選べてパターンオーダー(複数の既成サンプルからお客様の好みに近いものを注文)することができます。

東京では、地元のたつの市とまったく異なるお客様に出会えました。特に最近ご利用いただいているのが「ソファ・リペア(修理)」。“価値ある一生ものを長く大切に”をモットーにソファ、椅子などの古くなって傷んだ素材やクッションをレザーに交換・修理し、高級家具を維持させる新サービスです。十数年前に購入した思い入れのあるソファが生まれ変わると、感動で涙ぐまれる方もいます。お客様の喜びこそが、この仕事を続けている一番の理由です。

革製品に込める命と自然への感謝

健康生活で意識しているのは、運動とやはりJWティーですね。学生時代は190cm近い身長を活かして大学までJリーグを目指していました。部員70人くらいの大所帯をまとめるキャプテンを務めていましたが、みんなをガンガン引っ張るというよりは、ツッコミどころ満載の雰囲気をつくるタイプでした(笑)。そうした経験が、今のチーム運営やお客様との関係づくりにも活きていると感じています。

德永さん製作のJW商品専用革ケース。
德永さん製作のJW商品専用革ケース。

JWティーは毎日愛飲しています。ゴルフコンペで出会い、その時たまたま賞で当たったイオス創業20周年のステンレス保温ボトルにお湯とティーバッグを入れて飲んでいます。現在、月の半分は兵庫と東京の往復生活なので、日々の疲れを癒してくれるような貴重な存在です。今では家族全員の健康習慣になっています。この前、JWティーを紹介してくださった方からの勧めもあり、JWティーとバイオプラスを持ち歩くための専用革ケースも製作しました。意外と苦労しました。JWティーとバイオプラスの個包装の高さが違うので、それらを調整し、人が取り出しやすいサイズ感に設計。余白のミリ単位まで計算しています。使いやすさと美しさの両方にこだわった自信作です。

今後の目標は、もっと多くの人に革の魅力を知ってもらうこと。ワークショップや体験型のイベントを通じて、革がどうやって作られているのかを伝えていきたい。革製品は、動物からお肉をいただく時に出る皮を活用して作られています。ですので、動物の命を革製品のためだけにいただくということはありません。動物に感謝の想いを込めて、命の一部である皮を無駄なく革製品として活用していく。また、皮を始めとした動物の様々な部位は医薬品、油脂、コラーゲン、ゼラチン、肥料など、すべて余すことなく活用されています。これは、太古の時代から続く「エコでサステナブルな活動」であり、この先も続けていくことが、私たちの使命であると考えています。JWティーにも同じような自然への感謝と敬意が感じられます。

德永 尚三 さん

1976年生まれ。兵庫県たつの市にて創業140年を迎える老舗革製造業・徳永物産株式会社の四代目社長。2019年には「アジア・パシフィック・レザー・フェア(APLF)」のスモール・レザー・グッズ部門で1,200社を抑えグランプリを受賞。2023年には東京・文京区に「コモドス東京」店舗兼事務所を開設するなど、伝統産業を全国へ広げている。

EOS公式オンラインショップにて、多機能性「本革スモールポーチ3,500円(税込)」を販売。
EOS公式オンラインショップにて、多機能性「本革スモールポーチ3,500円(税込)」を販売。
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