【特別企画:免疫力Q&A】阿部 博幸 先生(東京キャンサークリニック理事長)インタビュー

感染症のたびに「免疫」も進化し、1,000億種類以上の抗体を作る力が備わる。

本年初夏号「INTERVIEW with JWティー」にご登場いただいた阿部先生。免疫療法の第一人者として著名な阿部先生が、現在のコロナ禍において最も注目を集める「免疫力」に関しての質問にお答えくださいました。

Qコロナ禍で「免疫力」の必要性が 叫ばれるのはどうしてですか?

A最初に、なぜ新型コロナウイルスのような感染症が流行るのかという説明からさせてください。決して肉体的に強い生物ではなかった人類の祖先は、自分たちを守るために集団で生活を営むようになりました。大移動をしたり、他の集団と交易をしたり争いをしたりする中で、1つの場所から発生したウイルスや細菌が人や動物へ次々と感染していったのです。歴史上最も恐れられた感染症が中世のペスト。流行った時にはヨーロッパの人口の3分の1が亡くなったとも言われています。このような感染症に打ち勝った人は免疫力が強かったと言われています。

Qそもそも免疫とは どのような仕組みですか?

A免疫とは「疫(病気)」を「免れる」、つまり病気にならないように体を守る仕組みのことです。体には病気を引き起こす様々なウイルスや細菌が侵入したり、細胞が変異を起こし、がん化したりします。こうした異物を排除しようとするのが、生まれながらに私たちに備わっている免疫力という生体防御システムです。もし免疫というシステムが体から無くなってしまったら私たちはすぐに何らかの病気にかかってしまうでしょう。
生体防御システムで働く免疫細胞は、主に血液の白血球の中に存在しています。そして、免疫は大きく「自然免疫」と「獲得免疫」に分けられ、相互に連携しています(下図)。自然免疫とは、人間の体に先天的に備わっている防衛機能で、病原体が侵入してくると免疫細胞の「樹状細胞」「マクロファージ」「好中球」が直ちに発見し、飲み込んで処理します。また、サイトカインという物質を放出して仲間に危険を知らせます。そして、全身を常にパトロールしている「NK(ナチュラルキラー)細胞」はウイルスや病原体に感染した細胞、がん細胞などを発見すると直接攻撃します。

一方、獲得免疫とは後天的に獲得される免疫で、異物の情報(抗原)を樹状細胞やマクロファージから「キラーT細胞」「ヘルパーT細胞」が受け取ると攻撃態勢に入ります。注目すべきはB細胞で、一度侵入してきた異物に対して「抗体」をつくり、次に同じ異物が侵入した時に効果的に排除できるようにします。インフルエンザなどの予防接種がイメージしやすいかと思います。大昔から感染症に襲われるたびに抗体の構造の組み換えが行われることなどで人類の免疫も進化してきました。体内には多種多様な抗体が存在し、その数は1,000億種類以上の対応が可能と言われています。免疫が正常に機能していれば、大抵の外敵に対応できる態勢が既に整っているのです。

Q免疫力を高めるための 生活習慣とは?

A新型コロナウイルスに感染しても、軽症で済む人と重症化する人がいます。それがまさに免疫力の差。年齢と共に免疫力は低くなり、20代をピークに40代からぐっと低くなると言われています。

①血液の流れを良くする

免疫細胞は「骨髄」で作られます。骨髄から必要とする部位へ免疫細胞がまわるように全身の血液やリンパ液の循環を良くしてあげると免疫力は高まります。ウォーキングやマッサージ、ヨガのようなストレッチも良いですね。また、体温が上がると血液の流れが良くなり免疫力が高まります。健康な人の体温は36.5~37℃で、体温が0.5℃下がると免疫力が35%低くなると言われています。

②栄養バランスのとれた食事を摂る

免疫のもとになるのは「アルブミン」という物質。その物質を増やすには、魚、肉、卵、豆などのタンパク質を摂りましょう。タンパク質は体内で分解されてアミノ酸になり、筋肉や内臓、髪などを構成する成分で、ホルモンや酵素、免疫細胞を作る役割を担います。しかし、それだけではなく、腹八分目を心掛けつつ、七色の新鮮な野菜や腸内細菌が喜ぶような発酵食品や食物繊維などを、バランス良くとることが重要です。

③ストレスを適宜発散する

人間はストレスを受けると脳下垂体が副腎を刺激し、「副腎皮質ホルモン」という物質が分泌されるのですが、これが強烈に免疫を低くしてしまいます。私のストレス解消法は美術鑑賞や旅行、山歩きですが、睡眠もその一つです。免疫細胞の活動も寝ている間に促進されるので、夜にしっかり最低6時間は睡眠をとることが大切です。また、日中の緊張から解放するのにJWティーのようなお茶も良いですね。リラックスする時間を持てますし、温かいものを飲んで循環が良くなれば老廃物の代謝も上がり、体温も上がりますので一石三鳥です。

寒い季節になりました。新型コロナウイルスに加えて、インフルエンザも流行る時期です。空気は乾燥しウイルスや細菌も飛び回りやすくなるので、適度な加湿と体を冷やさぬよう保温する工夫が必要です。新たな年を元気に迎えるためにも、免疫力を常に意識しながら日々の健康管理につとめましょう。

免疫力を高めるポイント

①血液の流れを良くする

  • ウォーキング、マッサージなど
  • 体温は36.5~37℃辺りを維持

②栄養バランスのとれた食事を摂る

  • タンパク質を多めに摂る
  • 七色の新鮮な野菜、発酵食品や食物繊維も摂る
  • 腹八分目を心掛ける

③ストレスを適宜発散する

  • 睡眠を最低6時間はとる
  • 温かいお茶でリラックス
阿部 博幸先生

1938年北海道生まれ。1964年札幌医科大学卒業。クリーブランド・クリニックにてクリニカル・フェロー修了。近年は「樹状細胞ワクチン」を中心としたがんの免疫細胞治療の研究・臨床に力を入れ、保有する技術について、日本や米国など世界12ヶ国(都市)で特許を取得。東京キャンサークリニック理事長と国際個別化医療学会理事長を兼務。

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