がん・感染症センター 都立駒込病院 脳神経外科部長 篠浦 伸禎先生

がん・感染症センター 都立駒込病院 脳神経外科部長 篠浦 伸禎先生

患者さんに意識がある状態( 覚醒下)で手術を行う「覚醒下手術」で世界屈指の実績を誇り、日本の名医100 人にも選ばれた篠浦先生。健康を守るうえで大切なのは、「人間が本来持つ自然治癒力を活かすこと」、「病気を治すための選択肢を増やすこと」と語る篠浦先生に、毎日飲まれているというJWティーについても伺いました。

病気がよくなるためであれば、あらゆる方法を選択する。

現在、私は脳外科医として専門的に脳腫瘍の治療にあたっています。治療に関しては、私が長年行ってきた西洋医療の範疇にとどまらず、あらゆるジャンルの治療法、施術の中から病気を改善するのに効果のあるものを選択する「統合医療」を標榜するスタンスをとっています。病気がよくなるためであればあらゆる方法を選択するという発想の原点は、三十代半ばで米国に留学した際の経験にあります。それまでは脳外科医として、できるだけ数多くの手術をして症例数をあげたい、技術を向上させたいという発想が当たり前だと思っていました。しかし、研究者として米国のシンシナティ大学分子生物学部に三年間留学し、臨床の現場から離れてみると、手術をすることだけが本当に患者さんのためなのか、本心では患者さんは手術を受けたくないのではないかという、世間一般から見ればしごく当然と言ってもいいような気持ちが芽生えはじめたのです。その後、二〇〇〇年から都立駒込病院に在籍し、〝患者さんに本当の意味で役立つ技術を提供したい〞との想いで「覚醒下手術」を導入しました。

統合医療とは、患者さんの〝自然治癒力〞を最大限に引き出す治療法。

覚醒下手術は最先端の西洋医療だから治療成績がよいのだと思われるかもしれません。しかし私は、覚醒下手術は西洋医療の範疇というよりも、むしろ統合医療の有力なオプションの一つだと考えています。統合医療とは「分野を問わず患者さんの〝自然治癒力〞を最大限に引き出す治療」とするならば、覚醒下手術はまさしく患者さんの自然治癒力を引き出しているからこそ手術成績がよいと言えます。覚醒下手術は、術中に症状が悪くなると一旦手を止めるのですが、そうすると患者さんの自然治癒力が働き、症状が回復することが数多くみられます。そして症状が一旦回復すると、その後同じ手術操作をしても症状が悪くなりにくいことさえあるのです。つまり、自然治癒力によって、術前より神経が強くなっているのです。翻って西洋医療の範疇に入る全身麻酔の手術は、自然治癒力が働く前に何度も神経を痛め続けることになるため、症状の悪化が多くみられるのです。ただ、覚えておいてほしいのが、緊急で対処しなければならない悪性腫瘍の細胞に対しては、西洋医療は強力な殺細胞効果があります。ですので、西洋医療を開始すると同時に、免疫力や自然治癒力を上げる治療を最初から併用する必要があるのです。このようなやり方をしていくと、治療効果が今までにないほどよくなったり、少なくとも副作用を劇的に減らせる例を数多く経験しています。

私が常に重視しているのは、治療効果があるかないかです。ですから、患者さんが独自に取り入れて治療効果をあげているもの、健康管理なども教えていただき、自分で経験して効果があることを実感できた、周囲の人も経験して効果があると感じる人が多いものは、次の統合医療の選択肢として考えるようにしています。JWティーもそのような形で患者さんから教えていただいた健康法の一つでした。JWティーとの出会いは、私が統合医療を強く意識するきっかけになった出来事と言ってもよいかもしれません。以前、私の外来に通われていた患者さんの中に、五十代で脳の障がいにより失語症や視覚の異常を発症し、退職を余儀なくされた男性がいました。当然、家でふさぎこんでいるに違いないと思ったところ、ある頃から自分で買い物に行き、料理を作ったりしているとのことでした。それで何か特別なことをしているのか奥様に聞いてみると、「気持ちを落ち着けるために飲ませています」と差し出されたのがJ Wティーでした。西洋医療を中心に考えていた私にとっては本当に驚きでした。私も実際に飲んでみると、とても落ち着きました。忙しい現代人はどうしても交感神経優位( 体を活動の方向に導く)になりがちなので、このようなお茶を飲んでゆったり過ごすことで副交感神経(体を安静の方向に導く)を優位にし、上手に休養をとることも、健康を維持するには大切なのではないでしょうか。日本人には昔からお茶を飲む習慣がありますから、日常生活にも取り入れやすいですしね。

生活習慣病の予防の観点からも、「食」「運動」「心」からのアプローチが欠かせない。

統合医療で欠かせないのが、西洋医療のほかに「食」「運動」「心」からアプローチすることです。悪性腫瘍は、がんや心臓病と同じ生活習慣病ですので、予防の観点からも、上記三つを日々の生活の中で意識することが重要です。

まず食に関してですが、栄養学のアインシュタインと呼ばれるT・コリン・キャンベルは膨大な研究結果をもとに執筆した論文の中で「植物由来のホールフード(未精製、未加工の食品)が生活習慣病を防ぐ」と述べています。日本で言うところの玄米菜食を指します。玄米と白米を栄養的に比較してみますと、玄米には、でんぷん、油、たんぱく、ビタミン類、ミネラルなど、人間が必要とするもののほぼすべてが含まれています。ビタミンだけでもB1、B2、B6、E、Kを含み、さらにリノール酸、リノレン酸、食物繊維、酵素など、人の体に必要な栄養素が豊富に含まれているのです。一方、白米は玄米を精白したものですが、栄養素の九十五%を含む胚芽、つまり米ぬかがなくなるので、白米には五%しか残っていないことになります。ただ、玄米ではビタミンA 、B12、Cが摂取できないので、プラスして野菜、海藻、豆腐、味噌汁などを摂ることが必要です。つまり、玄米を中心とした日本食は、栄養バランスが非常に優れているということです。

また、食と運動はセットであり、両方をきちんと実践することで、はじめて効果があがります。体が健康な高齢者の認知機能や注意力を改善するには、有酸素運動がよいでしょう。分かりやすくいうと、脈拍が一分間に百十から百二十を越えない範囲で、軽く汗ばむ程度の運動です。速足で歩く、ジョギング、サイクリング、水中歩行などがこれにあたります。これを週に三日以上、一回二十分以上程度続けると、健康維持に効果があるといわれています。

最後に、心に関してですが、実はこれが一番重要と言えるかもしれません。自分の脳の使い方が、ストレスへの対処がうまくできずに押しつぶされるようなものであれば、食や運動に関しても、努力してきちんと実践しようとしないでしょうし、その結果として自律神経が乱れ、体の血流が落ち、消化管の動きがおかしくなることによって免疫力が下がり、様々な生活習慣病につながってしまうからです。特にいま日本人に求められているのは、健康管理のすべてを病院や医師にゆだねるのではなく、「自分の体は自分で守る」と決意することから始める必要があると思っています。そのような人々が増えることで、本当に患者さんのためを思って治療にあたっている病院に人が集まり、統合医療の新たな流れが生まれてくると確信しています。

篠浦伸禎先生の著書紹介
篠浦伸禎先生の著書紹介

がん・感染症センター 都立駒込病院 脳神経外科部長 篠浦伸禎先生
がん・感染症センター 都立駒込病院 脳神経外科部長
篠浦 伸禎 先生
1958年生まれ。東京大学医学部卒業後、富士脳障害研究所、東京大学医学部附属病院、茨城県立中央病院、都立荏原病院、国立国際医療センターにて脳神経外科医師として勤務。シンシナティ大学分子生物学部に留学、帰国後、国立国際医療センターなどで脳神経外科医として勤務。現在は都立駒込病院脳神経外科部長として活躍している。主な著書に『脳は「論語」が好きだった』『脳にいい5つの習慣』など多数。