さとう うさぶろうさん(服飾デザイナー)インタビュー

華やかなファッションデザイナー生活から一転、タイのチェンマイで自然のエネルギーに満ち溢れた「いのちの服」作りに人生を捧げてきた、うさぶろうさん。今年七月、織物の中心地・京都の西陣にリニューアルオープンした拠点「Uooo KYOTO」で、服作りに込めた想いとJWティーについてお伺いしました。

太古の人々は衣服を通して自然の恵みをいただいていた。

衣服のルーツをたどると、布には暑さや寒さをしのぐだけではなく、邪悪なものから心身を守る、魂を癒すといった「祈る心」が込められていたようです。人類が草木の繊維や動物の毛で布を作り始めたのは紀元前6000年頃。布を彩る染料には、身のまわりにある植物の花や葉っぱ、木の皮や実、泥など、“自然”の恵みをいただいていました。太古の人々は植物に様々な薬効があることを知っていて、草木染めはそのエキスに布をひたして湿布を作ったのが始まりという説もあります。薬を飲むことを「服用する」と言うように、衣服は布に染められた草木の薬効を皮膚を通して吸収させ、病を癒すものでもあったのです。自然界のエネルギーを皮膚から取り込んで体と心と魂を活性化すること、私は着ることの意味をそう捉えています。

しかし現在、一般的に着られている服の多くはポリエステルやナイロンなどの化学繊維で織られており、化学染料で染められています。また、デザインを優先して作られた服は、体の自由な動きを妨げたり、内臓を締め付けたりしがちです。そういう服をずっと身に付けていると皮膚の感覚や、体本来の機能がどんどん失われていくのではないかと思います。着るものはファッションのためだけではない。どんな素材を選び、どう身につけるかで、その人の存在そのものが変わってくると私は考えています。

華やかなファッションデザイナーから一転、未来の地球に何ができるか自問自答を繰り返す。

いまでこそ私は、自然の息吹がたくさん詰まった服、着る人が元気になる服作りにしか興味がないのですが、昔からそうだったわけではありません。華やかなファッションデザイナーの世界に憧れ、東京でアパレルメーカーの企業デザイナーを経験した後、欧米で外交官に依頼されたオートクチュール(高級注文服)などの創作活動を行っていました。しかし1991年、ベルギーの自宅で突然、「このままでは地球が持たない、未来に続く地球にするために、あなたは何ができるのか?」という問いが脳裏をよぎりました。その問いは3週間ほど続き、いつしか物質中心、経済中心の世界に疑問を感じるようになり、それまで自分が作ってきた洋服にまったく魅力を感じなくなってしまったのです。それから4年ほどの間、世界各地を彷徨いながら自分が何をするべきか、自分の使命とは何かを模索し続けるうちに、私はいろいろなことに気付かされました。人間が自分たちのエゴで争いの世の中を作ってしまったこと、便利さを求めすぎるあまり自然を壊し、生態系をおびやかしていること。人間以外の動植物は、みんな自然と直結して生きているのに、人間だけが自然の一部だということを忘れ、不自然な存在になってしまっていることも。

地球が持続し、いのちが続いていくために、いのちの法則そのものである「自然」の一部であることを人間が思い出すために何が必要なのだろう。パワースポットに行かなくても、特別な体験ができなくても、みんながいつも自然のエネルギーを感じて、温かいいのちの調和に包まれていたなら…。その時、私の中で何かがつながりました。「服でそれを実現したい!」と。私の使命はやはり服だったのだとあらためて気付いたのです。

チェンマイに腰を落ち着けて23年、「いのちの服」作りに人生を捧げてきた。

私はまず、強いエネルギーを感じる布を探そうと思いました。シルクや綿、麻などの自然素材を草木で染めたもの。そして機械で作られた布ではなく、手つむぎ手織りであるということ。私は様々な体験を通して、人の手には大きな力が宿っていることを実感していました。布を探し始めてから2年、熊本県の幣立神宮に行く途中で偶然知り合った方が「タイのチェンマイに素晴らしい草木染めがあるから一緒に行きましょう」と誘ってくれたのです。そして、チェンマイの生地問屋の倉庫でロールに巻かれた生成りのヘンプの布に目を奪われました。同じ麻でもリネンはよく使っていましたが、ヘンプの布を見たのは初めて。私の目の色が変わったので周りにいた人たちはびっくりしたそうです。触ってみると手つむぎ手織り特有の温かい風合いの布。「やっと見つけた…」、長い間探し求めてきた布と、ついにめぐりあえたのです。私にとって値段も重要でした。その少し前に日本で最高級の草木染めに出会っていたのですが、値段も最高級。私が作りたいのは誰でも買えて気軽に袖を通せる普段着です。1人でも多くの人に身につけてもらい自然のエネルギーを感じることで「未来に続く地球」への気付きを得てもらいたいのです。

それからベルギーの家を引き払い、チェンマイに腰を落ち着けて23年、現地の縫い子さんたちと「いのちの服」作りに取り組んできました。2004年春には日本の拠点として「うさとジャパン」を京都に立ち上げ、「うさと」の服が好きで広めたいと思ってくださる人なら、どなたにでも展示会を開いてもらっています。現在、北海道から沖縄まで、年間500回ほどの展示会が開かれています。みなさんがお金儲けのためではなく、自分たちと同じ方向を目指すための「共有ツール」と捉えてくださっています。おかげさまで、日本全国で大変多くの皆様がうさとの服をまとい、自然の一部である日常を感じていただいているようです。普通、同じブランドを着た人同士が街で出会ったら、あまり良い気がしないものですが、うさとの服を着ている人同士が出会うと「懐かしい昔なじみを見つけたような気がするのです」と言ってくださる方が多くてうれしい限りです。そして今年7月、いくつかのご縁がつながり、織物の中心として名高い西陣の地に「Uooo KYOTO」をリニューアルオープンしました。1階は服の展示・販売スペース、2〜4階は、うさとジャパンの事務所、倉庫となっています。近くにお越しの際はお気軽にお立ち寄りください。

うさとの服を身につけながらJWティーを飲むと、より「自然の一部」であることを実感できる。

JWティーは飲み始めてから既に10数年になります。最初飲んだ時に、キリスト教、イスラム教、仏教と世界の宗教のイメージがパパパッと頭に浮かび、紹介してくれた方にお話ししたのを覚えています。3大陸のハーブがブレンドされているということも知らない状態で飲んでいたので紹介者の方も驚かれていました(笑)。

現在では、たくさんのJWティー愛飲者の方々がうさとの服を着てくださっています。昨年開催された「EOS EXPO」では、JWティー愛飲者が1200人くらい集まっていらっしゃいましたが、3分の1くらいの方が私たちの服をご存知でした。私はうさとの服を身につけながらJWティーをいただくと、自然と離れがちな現代社会においても、人間が「自然の一部」であることをより実感できる気がします。

さとう うさぶろうさん
さとう うさぶろうさん

1948年北海道生まれ。「うさとの服」デザイナー。東京で企業デザイナーを経験したのち、ベルギーの首都ブリュッセルでオートクチュールの創作に携わる。
1996年、タイのチェンマイに移住し、「いのちの服」づくりに着手。手つむぎ、手織り、天然染の布に“宇宙の法則”をデザインし、自然をまとうような心地よい服を「想い」と共に直接手渡しする展示会販売方式が日本各地に広まっている。
今年7月、京都・西陣にうさとの服の拠点となる「Uooo KYOTO」をオープン。

Uooo KYOTO
うさとジャパン

京都府京都市上京区智恵光院通今出川下ル横大宮町187-4
[営業時間]11:00~18:00/不定休 Tel.075-366-0586
[アクセス]京都市バス「堀川今出川」徒歩5分、または「今出川浄福寺」徒歩2分

あいをよる おもいをつむぐ こころはひとつ

うさぶろうさんの著書が今年7月に改訂されました!

『あいをよる おもいをつむぐ こころはひとつ』
さとう うさぶろう(著) 素敬 SOKEIパブリッシング
1,620円(税込)

今や自然衣料の代名詞とも言えるこの服が、どのように誕生し、どのように作られ、親しまれるようになったのか―。うさぶろうさんが“服づくり”のすべてを語ります。

ジェイソン・ウィンターズ・ティー