第2回

健康と美のカギ、「酵素」の働き

人間が生きていくうえで欠かせない酵素は、1日で作られる量が限られている。

人間の体は37兆個※とも、60兆個とも言われる数の細胞で構成されており、それらひとつひとつの細胞が化学反応を行っています。その化学反応に必要なのが「酵素」です。例えると、家を建てる時に構成するコンクリートや材木だけを持ってきても家は建ちません。それらを組み合わせる「大工さん」が必要です。体内で、その大工さんの働きをする存在が酵素であり、人間が生きていくうえで欠かせないものです。

体内での酵素の働きは大きく分けて2種類あります。「消化酵素」と「代謝酵素」です。「消化酵素」は食べたものを小さく分解して吸収されやすくする働きを持ち、「代謝酵素」は体を作ったり、解毒したりしています。このように生体の維持にとって非常に重要な酵素ですが、1日で作ることができる量は限られていると言われています。また、体内で作られる酵素は年齢を経るにつれて徐々に減っていきます。人間の体はこの一定の分量の酵素を「消化酵素」と「代謝酵素」に振り分けて使用しています。一方が多くなれば、もう一方が少なくなるシーソーのような関係です。つまり、食べ物を消化することにたくさん酵素を使ってしまう生活をしていると、体を作り、美と健康を維持する代謝酵素が足りなくなってしまうのです。例えば、髪の毛が黒いことは生命を維持することには関係ないので、消化が優先された結果、髪の色を作るために使われる酵素は切り捨てられ、白髪になります。逆に言えば、酵素を無駄遣いしない生活を送ることができれば、黒々とした髪でいられるのです。お肌の代謝も然りです。

酵素を十分補給し、無駄遣いしない生活を送ることが健康と美肌につながる。

それでは、大切な酵素を無駄遣いしないためにはどうしたらいいのでしょう。まずは食事の時、消化に酵素をたくさん使わないために早食い・大食いを避け、よく噛むことが大切です。一口入れたら最低30回は噛んでゆっくり食事をしましょう。また、食品添加物や農薬がたくさん使われた食事、トランス脂肪酸を含むもの等を食べると、解毒をするのに大量の酵素が使われてしまいます。アルコールを分解するにも酵素が使われるので、飲みすぎないように心掛けることも大切ですね。

同時に、食べ物から酵素を補給することも重要です。植物や動物、命があるものすべてに酵素は存在します。しかし、酵素は熱に弱く、加熱すると失われてしまいます。酵素を補うためには、酵素が多い食物を生で食べることが大切です。健康に気を付けている方の多くは、野菜を食べるとき、ゆでたり、蒸したり、スープにして量を摂ろうとしますが、それだけでは不十分で、生の野菜を摂る必要があるのです。果物にも酵素がたくさん含まれています。毎日意識的に果物を摂れば、果物の酵素が体の中で働いてくれるので、体内酵素が無駄遣いされずに済みます。食事時には、まずは酵素いっぱいの食物を先にいただいて、それから他のものを食べると消化の助けになります。生野菜はもちろん、果物も食後のデザートではなく最初に食べるのがコツです。例えば、魚と一緒に大根おろしを食べると、大根に含まれる酵素で消化が助けられますし、お肉をリンゴのすりおろしに浸けるとお肉が柔らかくなるのはリンゴの酵素の力です。酵素の多い食品を一覧にしましたので参考にしてください。

酵素を作る限界が来ると生命が終わります。いかに酵素を無駄使いせず生きるかが、健康で美しく長生きするための秘訣なのです。

酵素の多い食品

フルーツ

イチゴ・キウイ・バナナ・マンゴー・パイナップル・グレープフルーツ・リンゴ・プルーン・イチジク・梨・ブドウ

発酵食品

納豆・味噌・醤油・キムチ・甘酒・粕漬け

野菜

ブロッコリー・キャベツ・アボカド・セロリ・人参・ピーマン・大根・玉ねぎ・トマト・ホウレンソウ・ニラ・ジャガイモ・ゴーヤ・ナス・パプリカ・生姜

その他

エキストラバージンオリーブオイル・非加熱はちみつ・野菜の新芽(スプラウト)・海藻

皮膚科・美容皮膚科医 菅原由香子先生
原稿執筆

美容皮膚科医
菅原 由香子(すがわら ゆかこ)先生

1970年、北海道旭川市生まれ。弘前大学医学部を卒業後、札幌医科大学皮膚科、美容外科美容皮膚科勤務を経て、岩手県一関市にすがわら皮膚科クリニック(現・菜の花皮膚科クリニック)をご夫婦で開業。何をしても治らない肌荒れに悩む人々が評判を聞きつけて、日本全国から診療希望者が訪れている。これまでに10万人以上の肌のお悩みに向き合ってきた。ウェブサイト「お肌磨き研究所」運営のほか、情報サイト「スキンケア大学」で記事監修、テレビなど各種メディアにも多数出演。
2016年からジェイソン・ウィンターズ・ティーを愛用中。